研究課題/領域番号 |
19J12315
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
荒木 広夢 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
キーワード | トポロジカル絶縁体 / ベリー位相 |
研究実績の概要 |
本研究では、量子化されたベリー位相を使用して高次トポロジカル絶縁体を調べた。このベリー位相は、ひとつの単位胞内に局所的な捻りを導入したハミルトニアンに対して定義される。本研究では、これまで研究に用いられてきた量子化ベリー位相の適用範囲を拡張し、2次元および3次元の超立方格子上で定義される高次トポロジカル絶縁体模型であるBenalcazar-Bernevig-Hughes (BBH)模型に対しても適用できることを示した。また、この量子化ベリー位相は、系の角に局在状態を持つ高次トポロジカル相との間の対応関係が存在することを示した。このような対応関係は、具体的な模型として、先に述べたbreathing kagome模型や、3次元のbreathing Pyrochlore模型、2次元および3次元のBBH模型に対して成り立つことを示した。また、本研究では2次元のBBH模型を次近接のホッピングを持つ模型を提案した。この模型は解析的に角状態を得ることができる。また、本研究で提案されたこのベリー位相は、電子間相互作用がある系にも適用することができる。系が斥力相互作用を持つとき、この模型は相互作用が強い極限でCDW状態に転移すると考えられるが、非相互作用系の高次トポロジカル相と断熱的に繋がる領域において、ベリー位相が量子化した有限の値を取ることを示した。また、有限の相互作用を持つ系が高次トポロジカル絶縁体相に特有の角状態を持つことを数値的に確認した。同様に、2次元BBH模型の量子スピン版の模型についても調べた。量子スピン模型においても、量子化ベリー位相を定義し、高次トポロジカル相を特徴付けることを示した。 本研究の成果は論文としてまとめ、Physical Review ResearchにRapid Communicationsとして掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に記述した通り、本年度の主要な成果として、高次トポロジカル絶縁体相と呼ばれる新規な物質相に関して、世界に先駆けて相互作用の効果を取り入れた系の解析を行い、対応するトポロジカル数を提案した他、その3次元系への拡張を行った。その結果は論文として発表済みであり、我々の研究グループが提案している量子化ベリー位相の有用性を明確に示すことができた。また、高次トポロジカル絶縁体に関する共同研究を他に2報発表しており、いずれも量子化ベリー位相の有用性を示すものである。 これらのことから、本研究は当初の計画以上に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
非エルミート系は、強相関系における寿命のある準粒子を始めとして、散逸のある量子開放系や摩擦のある古典系等、様々な物理系で現れることが知られており現在盛んに研究されている。今後の研究では、不純物散乱により現れる準粒子について、その非エルミート性に注目した研究を進める。 具体的には、s波超伝導体に注目し、Bogoliubov de Gennesハミルトニアンに対して不純物効果としてオンサイトポテンシャルを加えた模型を考える。その際、exceptional ringと呼ばれる波数空間の線上でハミルトニアンが対角化不可能となる非エルミート系に特有の現象が起こることが期待される。 私はこれまで不純物の存在下での高次トポロジカル相の相転移に関する解析を行ってきた。その知見を活かして今後の研究では、系の厳密対角化およびランダム平均化を行うことにより準粒子の自己エネルギーやスペクトル関数等の物理量の計算を進める。これらの物理量を調べることで、exceptional ring等の非エルミート系に特有の現象の解明を行う。
|
備考 |
(1) 出版論文および発表を行った会議について研究者自身がまとめた個人サイトです。
|