今年度では、昨年度に議論したトーラス上の組紐群の議論を非可換エニオンの問題へと拡張し、いわゆる非可換分数量子ホール状態のトポロジカルな性質について議論した。さらに量子ホール状態の断熱接続の議論をラフリンの思考実験の問題に適応し、分数エニオンポンピングのバルクエッジ対応を議論した。以下、それぞれの内容について述べる。 (1)トーラス上の組紐群の解析 本研究では、非可換エニオンに対応した群の表現を明らかにするとともに非可換分数量子ホール状態のトポロジカル縮退と準粒子励起を特徴づけることを目的とした。トーラス上の解析の基礎として、シリンダー上の群構造を議論した。現在、そこで得られた表現が、非可換分数量子ホール状態が有する性質にどのように反映されてるか議論しているとともに、トーラス上の問題に拡張することを検討している。 (2)分数エニオンポンプのバルクエッジ対応 トポロジカルポンプはトポロジカル現象の典型例である。本研究では、前年度に議論した量子ホール効果の断熱接続性の議論に基づき、ラフリンの思考実験の問題をエニオンの分数量子ホール系に適応させ、いわゆる分数エニオンポンピングのバルクエッジ対応を数値的に示した。ここでのエッジの量は、基底状態多重項が定義する重心の跳びの和として定義している。本研究では、このエッジ状態が与える跳びが磁束貼り付け操作における一種の不変量になることも数値的に明らかにした。ここで得られた研究成果は日本物理学会にて発表済みである。また現在、論文を執筆中である。
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