ミトコンドリアにおいては、電子伝達系における化学反応によりH+がマトリックスから膜間腔へ汲み上げられ、内膜を介したH+電気化学勾配が形成される。そして、内膜に存在するH+-ATP合成酵素が、そのH+濃度勾配を利用し、アデノシン二リン酸(ADP)をアデノシン三リン酸(ATP)に変換する。本研究においては、藻類、微生物由来のH+ポンプロドプシンをミトコンドリア内膜へターゲティングすることにより、光エネルギーを用いて、内膜を介したH+電気化学勾配を作り出し、内在のH+-ATP合成酵素を駆動し、ATP産生を促進することを着想した。令和2年度研究においては、ミトコンドリア内膜トランスロカーゼ複合体結合タンパク質のミトコンドリアターゲティングシグナルTim291-90のC末端に微生物型ロドプシンの一種である、光駆動外向きH+ポンプ、archaerhodopsin-T(ArchT)を配位した遺伝子コンストラクト(Tim291-90-ArchT)を作製し、ミトコンドリアマトリックスpHセンサー2xCox8-pHujiと共発現するプラスミドを作製し、紫外(390 nm)、青(438 nm)、緑青(475 nm)、青緑(513 nm)、緑(549 nm)、黄(575 nm)、赤(632 nm)の各色光を照射しながら、pHujiの蛍光を計測するシステムを構築した。
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