研究課題/領域番号 |
19J12349
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
志賀 正崇 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
キーワード | 液状化 / せん断波速度 / 土粒子構造 / 原位置 |
研究実績の概要 |
N値を用いた従来の簡易液状化判定法では、実際の液状化強度を極端に安全側に評価することが2011年東北地方太平洋沖地震後の調査で指摘されている。また、一般的なサンプリング手法による不撹乱試料を用いた液状化試験結果は、供試体の乱れの影響を大きく受ける。このような現行の液状化強度予測手法の課題に対し、清田らは土粒子構造が液状化強度に及ぼす影響をせん断波速度Vsで評価できることを示し、原位置試験と再構成試料を用いた室内試験で計測されるVsを利用して原位置液状化強度を評価する手法(以降、提案手法と称する)を開発した。本年度の研究では、この提案手法をより多様な地盤に適用させること、および実務への適用性を検証することを目的とする。具体的な内容としては以下の2点を実施した。 1) 既往研究3,4)のCRR-Vs関係は、豊浦砂等の限られた試料を中心とする実験で示された。本研究では東京湾臨海部で採取された沖積砂質土、および火山灰質土を対象に一連の実験を実施し、既往研究と比較した。実験結果では、いずれの試料においてもOCRが大きくなるとCRRとVs共に大きくなることが確認され、既往研究のCRR-Vs関係とも整合する結果となった。 2) 過去の地震で液状化の発生が確認されていないにもかかわらず、簡易液状化判定手法では液状化と判定される地盤を対象に、採取試料を用いた一連の室内試験を実施して提案手法の適用性を検討した。実験から提案手法を用いた原位置液状化強度とFL値は現地の実態を反映する結果となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究内容1)の検討のため、東京湾臨海部(川崎市内)で採取した砂質土(沖積砂質土1)、および北海道美幌町地内から採取した火山灰質土を対象に、所定の密度において過圧密履歴により土粒子構造を変化させた供試体を用いて、一連のVs計測と液状化試験を実施した。 一連の実験結果から、供試体密度は同等であるが、OCRが大きくなるとCRR、Vs共に大きくなることが確認された。この事実から過圧密履歴により土粒子構造が強化されたことが示唆される。同様の傾向は火山灰質土でも確認された。また、それぞれの試料のOCR= 1の結果で正規化したVs-CRR関係は既往研究の示す傾向と整合することが確認された。本研究で用いた火山灰質土は、実験前後で有意な破砕性は確認されなかった。このことから火山灰質土であっても破砕性を示さない限りは、提案手法を用いて原位置液状化強度を推定できる可能性がある。 研究内容2)に関して、2011年東北地方太平洋沖地震において、従来の簡易液状化判定手法では液状化と判定されたが実際はその痕跡が確認されなかった東京都葛飾区地内の江戸川河川敷を対象に提案手法の検証を行った。本研究では簡易判定法でFL値が0.24と最も低かったGL-7.5mの沖積砂質土を対象に検討を実施した。提案手法の手順に従い、標準貫入試験により採取された撹乱試料を用い、原位置密度(1.44g/cm3)と同等になるように調整した再構成試料において、原地盤の有効上載圧を考慮した圧力で等方圧密後、Vs計測と液状化試験を実施した。提案手法における計算式を用いた場合、原位置液状化強度CRRは0.42と見積もられ、検討対象深度ではFL=0.99となった。これは当該地点で東北地応太平洋沖地震時に液状化の痕跡が確認されなかった事実を反映しており、従来の簡易判定と比べて現実的な値であると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は年代効果が地盤の液状化強度に与える影響の定量的評価を目的とした、力学試験の実施を主に実施する。過去の地震による液状化被害は主に沖積層で発生してきたが、将来的に発生される巨大地震に対しては、より年代の古い洪積層の液状化も考慮する必要がある。既往研究では年代が古い地盤の力学特性の変化(年代効果)の液状化特性に対する影響が考察されているが、統一的な見解は得られていない。また既往の研究ではセメント含有率を変化させその力学特性を論じたものがあるが、年代効果は過去の応力履歴や堆積構造などの複合的要因からなり、単一パラメータのみを変化させただけでは、相互的な影響を論じることはできないと考えられる。 このことから申請者は、異なる供試体作成方法とセメント含有率を持つ供試体について非排水繰り返し載荷試験と一軸圧縮試験を実施し、年代効果を模擬的に付与した地盤の力学特性を検証する。また圧密時、繰り返しせん断時においてせん断波速度の変化を計測し、異なる年代効果の応力ひずみ関係や応力経路に対する影響を考察する。また現行の液状化判定に対して、年代効果の影響を考慮したせん断波速度による簡易判定法の構築を行う。
|