本研究では患者由来肺癌細胞株を樹立したことを通して、IGF2の過剰発現が第3世代EGFR阻害薬であるOsimertinibの耐性化に関わることを見出した。まず、IGF1R阻害薬であるLinsitinibがOsimertinibと併用することで耐性株の増殖が抑制され、さらにはアポトーシスを誘導することを確認した。また、IGF関連遺伝子の発現プロファイルを定量することで、IGF1RのリガンドであるIGF2が過剰発現していることを発見した。さらに、患者由来細胞株KOLK43のin vivoモデルの免疫染色により、IGF2が腫瘍細胞から自己分泌されることを確認した。そして、in vivoでも薬剤感受性試験を行い、OsimertinibとLinsitinibが併用効果を認めることを証明した。
次に、Osimertinib耐性化前後の臨床検体を用いて、IGF2の発現量が異なるかの比較検討を行った。その結果、4/6症例でOsimertinib耐性化後にIGF2発現量の上昇を認め、IGF2過剰発現による耐性化が臨床上でも起こりえることを示した。
以上より、本研究ではIGF2自己分泌によるIGF1R活性化がOsimertinibの耐性化機序であることを証明した。さらには、この耐性化機序が臨床でも起こりえることを示し、Osimertinib耐性後の肺癌患者の治療選択肢を広げる可能性があった。
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