前年度に開発したAM3の全合成法を応用し、効率的なAM3の構造活性相関研究を行った。すなわち、ポリオール部分、ポリエン部分、AB環部分をそれぞれ合成し、各フラグメントを鈴木宮浦カップリングおよびJulia-Kocienskiオレフィン化によって順次連結することで、巨大なアンフィジノール類縁を複数種類合成することができた。 ポリオール部分を一部、または完全に省略したC20-C67アナログ、C21-C67アナログおよびC31-C67アナログを合成し、抗真菌活性試験を行った。その結果、分子量にして約28%削減したC21-C67アナログが天然物に匹敵する強さの抗真菌活性を示すことが明らかになった。本研究成果はAM3の人工類縁体が天然物と同等の活性を示した初の例であり、耐性菌の出現しにくい新奇抗真菌剤開発に向けた大きな一歩であるとえいる。一方で、C31-C67アナログは一切活性を示さず、C21-C31位の構造が抗真菌活性に重要な役割を持つことが示唆された。 また、開発したC21-C67アナログの構造を基盤とし、C32-C38位またはC43位の絶対配置を反転させた2種類の人工アナログを設計し、それぞれ合成を行った。抗真菌活性試験を行った結果、合成した両アナログ分子は一切活性を有しておらず、AM3のC32-C38位および、C43位付近の構造が抗真菌活性に重要な役割を持つことが示唆された。また、得られた結果に基づいて、AM3の作用機構に関する考察を行い、AM3の生体膜中のステロール分子の認識に関する新たな仮説を提唱した。AM3のAB環部分に関する構造活性相関研究の知見はこれまでに一切報告されておらず、本研究成果はAM3の作用機序解明の大きな一助となった。
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