研究課題
ポリネシア人の祖先はアジア起源の集団であり、彼らはポリネシアへの移住の過程でニアーオセアニアにおいてパプア系の集団と混血したと考えられる。しかし、ポリネシア人は遺伝的に近いとされる他のアジア集団やオセアニア 集団に比べ、約10cm高い平均身長をもつ。身長は遺伝率が高い形質の一つであることから、ポリネシア人の高身長化もまた遺伝的要因の変化によると考えられる。そこで本研究では、『ポリネシア人の高身長化は、身長を高くする効果のあるパプア人由来の多型、あるいはポリネシア人特異的突然変異が、正の自然選択によって集団中に広まったために起きた』という仮説を立て、ポリネシア人の高身長化に寄与した遺伝的多型の検出を目指している。今年度は、ポリネシア集団トンガ(n=15)、パプア集団ギデラ(n=16)に対し全ゲノムシークエンスを行った。取得済みのDNAチップによるデータとともに全ゲノムSNP解析を行い、パプア系祖先集団由来のゲノム領域にはたらいた自然選択とポリネシア人特異的な自然選択にわけて、それぞれ異なる手法を用いてポリネシア人ゲノム中の自然選択がはたらいたと考えられる領域を検出した。検出した領域には免疫に関わる遺伝子が多く含まれていた。現在は検出した領域に存在する、身長に影響をあたえている可能性の高いオセアニア特異的な多型の選出を進めており、オセアニア4集団(n=699)に対して身長との関連解析を行い、関連が見られたものに関しては、今後機能解析等進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
既に自然選択がはたらいたと考えられる候補領域を検出しており、また、その中にはヨーロッパ集団などで身長との関連が報告されている遺伝子も存在している。
検出した領域に存在する多型に対し、遺伝子の機能や変異の種類などに基づいて順位付けを行い、オセアニア4集団(n=699)における身長との関連解析を行う。関連の見られた多型については、集団全体の身長に与える効果の推定や、自然選択の強度を推定するシミュレーション、機能解析等を行う。
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Scientific Reports
巻: 10 ページ: 6872
doi.org/10.1038/s41598-020-62866-3