研究課題/領域番号 |
19J12597
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
秋山 敏毅 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 鉄(0)ナノ粒子 / ナノ粒子触媒 / リガンドフリー / 鈴木ー宮浦カップリング / C-Hアミノ化 |
研究実績の概要 |
当研究室独自のナノ粒子触媒製造法(in situ ナノ空間制御法)に含ケイ素ピラジン誘導体を強力な還元剤として用いることで、Fe(0)ナノ粒子を金メッシュ(担持固体)に担持した触媒SAFe(0)(Sulfur-modified Au-supported Fe(0))を製造することに成功した。 このSAFe(0)上のFeの酸化状態を調べるべく、X線吸収微細構造(XAFS)解析実験を実施した。その結果、SAFe(0)上のFeはFe(0)であることが明らかとなった。さらに、SAFe(0)の立体構造を解析すべく走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)観察を実施した。その結果、Fe(0)は6-10 nmのナノ粒子であり、金メッシュ表面上に多層状に堆積していた。すなわち、Fe(0)ナノ粒子とキシレンポリマーからなるマトリックスが金メッシュ上に多層状に堆積していることを明らかにした。 SAFe(0)は、従来のFe(0)ナノ粒子触媒では困難であった炭素-炭素結合を形成する鈴木-宮浦カップリングや炭素-窒素結合を形成する炭素-水素結合活性型アミノ化の高活性な触媒であることを明らかにした。SAFe(0)を用いれば、これらの反応はいずれもリガンドフリーで進行した。鈴木-宮浦カップリングではヨウ化アリールに加え、安価で入手容易な臭化アリールにも適応可能であり、幅広い基質適応範囲を有することがわかった。さらに、SAFe(0)は10 回以上繰り返し利用が可能であり、反応溶液中のFe 漏洩量をppb レベルまで減らすことも可能であった。炭素-水素結合活性型アミノ化ではSAFe(0)は10回以上繰り返し利用が可能であり、幅広い基質適応範囲を有することがわかった。 また、SAFe(0)を用いた2 反応がリガンドフリーで進行することを活かし、2 反応をワンポットで達成することにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当研究室独自のナノ粒子触媒製造法(in situナノ空間制御法)と含ケイ素ピラジン誘導体を組み合わせることで、空気中で取り扱い容易なFe(0)ナノ粒子触媒SAFe(0)の製造を達成した。触媒調製の際、用いた金属塩や有機還元剤の酸化還元電位に応じてFe(II)ナノ粒子とFe(0)ナノ粒子がそれぞれ生成することを見出した。すなわち、金属塩と有機還元剤の酸化還元電位によって理論的にFe(II)とFe(0)を理論的に創り分けることに成功した。 SAFe(0)を用いたカルバゾール合成法の開発では、リガンドフリー触媒の性質を生かしてワンポットで炭素―炭素/炭素―窒素結合形成反応を達成しており、SAFe(0)の有用性を示している。 また、これらの成果を国内学会(第45回反応と合成の進歩シンポジウム)や国際学会(47th Naito Conference、20th IUPAC International Symposium on Organometallic Chemistry Directed Towards Organic Synthesis、27th International Society of Heterocyclic Chemistry Congress)にて発表し、著名な国際学術誌である「Organic Letters(アメリカ化学会)」に投稿することができた。 次年度では、より高難度変換法であるSAFe(0)を用いた炭素―水素結合活性化へと応用が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
当研究室独自のナノ粒子触媒製造法(in situナノ空間制御法)に適切な還元剤を組み合わせることで、Fe(II)ナノ粒子触媒SAFe(II)とFe(0)ナノ粒子触媒SAFe(0)を理論的に作り分ける方法を見出した。すなわち、酸化還元電位に基づいて理論的に所望のFeナノ粒子触媒を調製する方法を見出した。本手法を他の卑金属(CoやCuなど)ナノ粒子触媒の製造に応用する。 また、SAFe(0)や新たに得られた卑金属ナノ粒子触媒を用いたより高難度変換法である炭素―水素結合活性化へと応用する。
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