研究課題/領域番号 |
19J12733
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長井 雅嗣 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / エッチング / トレンチ / MOSFET / 界面準位 / 半導体 / 低損失 / ステップ |
研究実績の概要 |
高温水蒸気アニールによるOH終端化処理を施したダイヤモンド(111)表面における接触電位差及び電流をコンダクティブAFMにより調査した結果を論文として発表した。本研究において、ステップテラス領域とバンチングステップ領域における接触電位差と電流には明確な差が確認された。、I-V特性から得られたn値は、ステップテラス領域のものよりもバンチングステップ領域のものが大きかった。このことは、測定系で金属(M)/ 酸化膜(O)/半導体(S)ダイオード構造が形成している可能性が高いことを考慮すると、バンチングステップ領域では一定面積あたりより多くの界面準位が発生していることを示唆している。バンチングステップ領域とステップテラス領域の違いがステップ密度のみであることから、MOSダイオード構造において半導体上のステップが界面準位の原因である可能性が高いと結論付けた。従って、界面準位の少ない理想的なMOS界面を作製するためには、ダイヤモンド半導体表面のステップ密度を可能な限り小さくする必要があることが分かった。 また、ダイヤモンド(110)面に対しNi膜を用いた結晶異方性エッチングを施すことにより、表面に対し垂直な側壁を持つダイヤモンドトレンチの形成に成功し、その成果を論文として発表した。結晶異方性エッチングを(100)に施す限り、表面に対し停止面となる(111)面が約55°の角度を為して存在することから、垂直な側壁を有するトレンチを形成することが困難であったが、そのようなトレンチの形成技術は低損失なトレンチMOSFETを作製する上で強く求められている。本研究では、結晶異方性エッチングにより垂直な側壁を有するダイヤモンドトレンチの形成が可能であることを世界で初めて実証した。この技術は、超低損失なトレンチ型ダイヤモンドMOSFETを実現する上で重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高温水蒸気アニールによるOH終端化処理を施したダイヤモンド(111)表面における接触電位差及び局所電流特性をコンダクティブAFMにより調査した。その結果、ダイヤモンド半導体表面に存在するステップが界面準位の発生源であることを示した。これにより、低界面準位密度の理想的なMOS構造を作製し、高チャネル移動度を実現するための指針が与えられた。 また、ダイヤモンド(110)面に対しNi膜を用いた結晶異方性エッチングを施すことにより、表面に対し垂直な側壁を持つダイヤモンドトレンチの形成に成功した。この垂直な側壁を持つダイヤモンドトレンチ形成技術は、超低損失を実現する縦型ダイヤモンドMOSFETの実現に大きく貢献しうる。 ダイヤモンドMOS界面における理論計算は、今年度その基礎を学んだ段階である。今後は、実験と計算の両面からの議論が期待できる。 得られた成果は既に2報の査読付き国際学術論文にまとめており、国際会議でのポスター賞も受賞している。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの発生により、実験ができない状況が続いており、超低損失なダイヤモンドMOSFETの作製をすることが期間を考えると難しい状況となっている。従って、今後は界面準位密度の小さい理想的なMOS界面を作製するための知見を得ることを目的により詳細な研究を行っていく。 具体的には、ステップテラス領域とバンチングステップ領域をp-型(111)ダイヤモンド基板上に作り込み、その上にアルミナ堆積し、KPFMやCAFMで接触電位差や電流の評価を行っていく。CAFMでは、探針が金属、アルミナが酸化膜、ダイヤモンドが半導体であることから、局所的に形成されるMOSダイオードの電流-電圧特性を得ることができる。これら電流-電圧特性から、ステップテラス領域とバンチングステップ領域における界面準位密度を評価することが可能となる。これにより、ダイヤモンドMOSFETにおけるダイヤモンド半導体の表面構造と界面準位密度の関係が明らかになることが期待され、低界面準位密度の理想的なMOS構造を実現するための指針になると考える。
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