研究課題
従来の認知症早期発見は、自覚症状や家族の気付きの後に認知機能検査を受けることで行われているが、早期発見の遅れや負担の大きさが課題となっている。本研究は記憶から言葉を選出し発するという人間の特性に着目し、記憶の障害である認知機能低下を言語で捉えることを検討する。そのため、認知機能正常群の高齢者と比較し、低認知機能群における高齢者の自然言語パターンの特徴を機械学習による自然言語処理を用いて捉える。また、低認知機能高齢者の特徴をよりよくとらえるため、社会的な環境要因や身体状態・精神状態の項目も検討する。大阪大学医学部付属病院の通院患者と地域在住高齢者疫学研究調査のSONIC研究の80歳前後の参加者を対象に研究調査を行った。調査期間は2019年6月から2020年1月で、インタビュー・アンケート・認知機能テストを大阪大学病院の患者には対面にて、地域在住高齢者疫学研究SONIC研究参加者には電話にて調査を実施した。調査実施後、2020年1月よりインタビュー内容を書き起こし、完了している。現在自然言語データベースを作成中である。191名の参加者のうち、38名(19.9%)は大阪大学医学部附属病院の患者で、SONIC研究の参加者は153名(80.1%)であった。認知機能テストTelephone Interview for Cognitive Status (TICS)の認知機能低下のカットオフである33点以下であったものは、60名(31.4%)であった。今後自然言語データベースを完成させ、認知機能正常群の高齢者と比較し、低認知機能群における高齢者の自然言語パターンの特徴を機械学習による自然言語処理にて明らかにすることを実施する。
2: おおむね順調に進展している
年度内に横断データの収集が完了したため。また、自然言語データベースの完成をもって横断的解析が実施可能となり、自然言語データベースの完成度は70%ほどであり、2020年5月中に実施可能予定である。
前年度調査を行った対象者に対し、認知機能検査を電話調査にて行う。調査後、収集した会話のテープ起こしで自然言語データベースを完成させる。データベース完成後、1年で認知機能低下を起こした群の自然言語パターンを抽出する。加え、この自然言語パターンによる認知機能予測力が、認知機能検査の予測力と比較し、優れているかどうかを検討する。結果は国内外の学術集会や原著論文として国際雑誌で発表する。自然言語処理は機械学習の一種であるため解析が難解であり、国内外の勉強会参加や研究機関で研究指導を受ける予定である。コホートの地域在住住居者は申請者の指導教官が主宰するSONIC研究の参加者であるため対象者の収集は実施済だが、多様な対象者に対応するため通院・入院患者の情報も収集する。前年度と同様に、雇用した調査員と共にデータ収集を行う。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
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