本研究は、植物系バイオマスの分解に寄与するルーメン微生物を明らかにし、その微生物を高密度・減容化することを目的としている。本年度は、①高活性多糖分解酵素の同定、②高密度・減容化方法で回収したルーメン微生物の群集構造解析を試みた。 ①昨年度までの研究で特定した5種類の高活性エンドグルカナーゼについて、ザイモグラムのゲルから活性バンドを切り出し、LC-MS/MSによってタンパク質を同定した。1種類はFibrobacter属由来のエンドグルカナーゼと推定されたが、他4種類は既知のエンドグルカナーゼと一致しなかった。次に、高活性キシラナーゼについてザイモグラムを用いて解析した。分子量の異なる複数のキシラナーゼが高い活性を持っており、キシラン分解過程でキシラナーゼ活性が変化することを明らかにした。キシラナーゼ活性と微生物の存在割合を相関解析したところ、エンドグルカナーゼと同様にプロトゾアや真菌、未分類細菌と正の相関を示したことから、これらの微生物が植物系バイオマスの分解に寄与することが示唆された。また、5種類の高活性キシラナーゼを同定した結果、いずれも既知のキシラナーゼと一致しなかった。以上より、ルーメン微生物群集において、プロトゾア・真菌・未分類細菌が高活性な多糖分解酵素を発現し、植物系バイオマスの分解に寄与することが示唆された。 ②昨年度までに開発した凝結凝集法がルーメン微生物数および群集構造におよぼす影響を解析した。凝結凝集法による細菌・真菌・プロトゾア数の有意な減少は見られなかった。また、多糖分解活性Fibrobacter属、Ruminococcus属、未分類細菌(LachnospiraceaeやClostridiales)の存在割合も凝結凝集法による変化は見られなかった。以上より、凝結凝集法によって多糖分解性ルーメン微生物を効率的に高密度・減容化できることが明らかになった。
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