研究課題/領域番号 |
19J12763
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉本 翔 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | イヌ / がん / 間質細胞 / 免疫細胞 / キメラ抗原受容体発現T細胞 / 腫瘍関連線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
平成31年度は、イヌのCAR-T細胞の拡大培養条件や遺伝子導入条件について検討し、CAR-T細胞の作製条件を最適化した。健常なイヌの末梢血からT細胞を分離し、磁気ビーズを用いてイヌT細胞を活性化後、レトロウイルスベクターにより、キメラ抗原受容体(CAR)をイヌT細胞に遺伝子導入することに成功した。CARはイヌT細胞に安定して高発現しており、イヌCAR-T細胞の抗原特異的な細胞増殖、サイトカイン産生および細胞傷害能がin vitroで確認できた。また、拡大培養時に加えるサイトカインの種類により、CD4+T細胞/CD8+細胞比、エフェクターT細胞/メモリーT細胞比が変化することが明らかとなった。 次に、共刺激分子のシグナルドメイン(CD28、4-1BBあるいはICOS)をCARの構造に組み込み、各種共刺激分子のシグナルがCAR-T細胞の機能に与える影響を評価した。すると、CD28と4-1BBを組み込むことでCAR-T細胞の細胞増殖能とサイトカイン産生能を増強することが示された。今後、共刺激分子がCAR-T細胞の細胞傷害能の持続性や疲弊マーカーの発現に与える影響を評価していく予定である。 また、申請者が所属する研究グループは、がん細胞とCAFの両方に発現する腫瘍特異的な糖鎖修飾を受け構造が変化したポドプラニンに対するイヌキメラ化抗体の開発に成功した。in vitro, in vivoでの治療効果および犬での安全性も示され、現在、本抗体薬の臨床試験を東京大学附属動物医療センターで実施中である。今後、本イヌキメラ化抗体の臨床的有用性について検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去の報告ではイヌのCAR-T細胞の作製条件は最適化されておらず、がん細胞に対する抗原特異的な細胞傷害能が十分に得られていなかった。平成31年度の最優先の課題は、イヌT細胞における安定したCARの高発現を得ることであったが、本研究では拡大培養条件と遺伝子導入条件を最適化しイヌCAR-T細胞の作製することに成功し、本課題を解決することができた。 また、CAR-T細胞に並行して、イヌキメラ化抗体の開発にも成功しており、本抗体のin vitro, in vivoでの抗腫瘍効果およびイヌでの安全性も示された。 以上より、進捗状況をおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、当初腫瘍細胞と腫瘍関連線維芽細胞の共移植マウスを作製後、CAR-T細胞療法を投与し、抗腫瘍効果と抗腫瘍機序を判定する予定である。しかし、新型コロナウイルスの影響で、所属研究機関での実験が現在停止しているため、研究再開の目処が立っていない。博士課程修了までの期間をふまえ、共移植マウスを用いたin vivoの実験の実施が難しいと想定される場合、研究計画を変更し平成31年度の実験結果から研究の更なる発展性が見込まれた【共刺激分子がイヌCAR-T細胞の機能に与える影響】を明らかにするために、in vitroの実験を行う予定である。
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