研究実績の概要 |
まず研究計画(1)として、鉄触媒による芳香族ケトンのオルト位炭素-水素結合のホモアリル化反応の開発に取り組んだ。炭素-水素結合のホモアリル化は主に、ホモアリルハライドやシクロプロピルメチルハライドのようなハロゲン化アルキルを用いて達成されているが、無置換のホモアリル基の導入に限られる。そこで、メチレンシクロプロパン(MCP)をカップリングパートナーとすることで、多様なホモアリル基の導入が可能になると考え、本研究に着手した。検討の結果、シクロプロパン上にアルキル基やアリール基を有するMCPが本反応に利用できた。そしてエステルやニトリルのような官能基が許容であり、芳香族ケトンとしてアルキルアリールケトンのみならず、ジアリールケトンも適用可能であった。 次に研究計画(2)として、鉄触媒による芳香族ケトンのオルト位炭素-水素結合のアリール化反応の開発に取り組んだ。以前の検討から、N-ビニルインドールをカップリングパートナーとすると、アルキル化生成物に加え、鉄の1,4-転位を経る2-インドリル化が進行することがわかっている。金属の1,4-転位は主にロジウムやパラジウムで知られている現象であり、鉄の1,4-転位についてはこれまでほとんど報告例がなかった。さらに、炭素-水素結合のアリール化は、現在までに様々な手法により達成されているが、1,4-転位を経るアリール化は前例がなかった。そこで今年度は、本反応のさらなる展開を目指し、反応条件の最適化ならびに基質適用範囲の検討を行った。
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