研究課題/領域番号 |
19J12836
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
村瀬 偉紀 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 緯度クライン / 地理的変異 / 耳石 / アユ / 温暖化 |
研究実績の概要 |
今年度は、2019年春に日本全国の河川で採集したアユ稚魚について、耳石解析に基づいて生活史特性の地理的変異に関する知見を得た。これらのデータを、2001年に遡上した群から得られたデータと比較することで、気候変動に伴う温暖化がアユに及ぼす影響を考察した。 2019年3月から6月にかけて、全国25河川を遡上した稚魚合計244個体を対象として、耳石の微量元素分析および日輪解析を行った。河川遡上のタイミングを基準として、遡上時の体サイズ、日齢、成長速度、耳石の成長曲線の4つの生活史特性を求めた。太平洋側と日本海側の海域ごとに、生活史特性の地理的変異の実態を明らかにし、2001年と2019年採集群で比較した。 生活史特性の地理的変異を調べた結果、2001年採集群で得られた結果と同様に、太平洋側と日本海側の海域に依らず、成長速度は負、遡上日齢と耳石の成長曲線は正の緯度クラインを示した。一方で、遡上体サイズは、採集年や海域によって、緯度クラインの勾配の正負が異なった。2001年と2019年採集群の比較からは、日本海側では、2001年採集群と比べて2019年採集群で、成長速度が高く、日齢が高齢になったのに対して、太平洋側では、特に高緯度で採集された個体において、2001年採集群と比べて2019年採集群で、成長速度が低く、日齢が高齢になる傾向が認められた。これらの傾向は、海域によって異なる海面水温の時空間的変動の影響を受けた可能性がある。また、2001年と2019年採集群の比較から、日本海側、太平洋側の両海域において、特に中・低緯度で、生活史特性が大きく変動したことから、気候変動に伴う海面水温の上昇は、特に、中・低緯度に分布するアユの生活史に大きな影響を及ぼすと推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点では特に支障となる懸案はなく、当初の研究計画に基づいて、標本の採集および分析は全て順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、これまでに2001年採集群および2019年採集群から得られたデータに基づいて、アユの最適生活史モデルを構築して、温暖化が今後のアユ資源に及ぼす影響の予測を目指す。また、これまでに得られた耳石標本を用いて、水温履歴の抽出を試みる。
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