研究実績の概要 |
シクロデキストリン(CD)とポリマーの自己組織化では、ポリマーの構成モノマー種、分子量、親水疎水性、トポロジー、シーケンスなどを調節することで、ロッドやキューブ、プレート、ナノシートなど、多様な高次構造形態を形成することができる。ごく最近、軸分子にpoly(ethylene oxide)75-block-poly(propylene oxide)29-block-poly(ethylene oxide)75 (数字はモノマーユニット数)を用いてβ-CDと包接錯体を形成させると、ナノシート状の構造体(擬ポリロタキサンナノシート: PPRNS)を作成できること見出した。本年度は、EOmPOnEOmトリブロック共重合体の組成を調節することで、β-CDとの包接錯体形成によって形成される高次構造への影響を調べた。EO5PO29EO5, EO14PO29EO14, EO75PO29EO75は、中央POセグメントに等しい厚さのPPRNSが積層したラメラ構造を形成した。β-CDが選択的にPO成分を覆い、β-CD層とEO層の間でミクロ相分離を起こしたためである。EO層の厚さは、EOユニット数と比例関係となっていたことから、EO鎖がβ-CD 上の仮想的なシリンダー内に収まっていることが示唆される。つまり、ラメラ構造の結晶層(β-CDとPO)と非晶質層(EO)の両方の厚さを正確に制御できる。一方、EO2PO29EO2は、POだけでなくEO鎖もβ-CDで覆われた薄い板状の構造を形成した。つまり、β-CD層とEO層が相分離したラメラ構造を形成するためには、中央のPOセグメントが十分に長い必要があることもわかった。本研究により、PPRNS中のCD層の上下に伸長EO鎖がブラシ層を形成していること、およびCD層とEO層の各層のナノスケールの厚さを調節可能であることを見出した。
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