研究課題/領域番号 |
19J12912
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
戸田 絵梨香 首都大学東京, 大学院理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 受精卵 / 発生 / 父性因子 / トランスクリプトーム解析 / イネ |
研究実績の概要 |
これまでの報告者の研究より、イネ受精卵(胚)発生過程における雌雄配偶子の機能差が実験発生学的に明示され、さらに、融合後4時間の受精卵内で父性アリル依存的に発現する23 遺伝子が同定された。これら23 遺伝子の中には、AP2 ファミリーやWRKY ファミリーなどの転写因子をコードする遺伝子が存在し、これら父性転写因子群が、受精卵の発生開始・進行の鍵因子として機能することが想定された。そこで、これら同定された父性遺伝子群のうち、転写因子をコードする遺伝子群に着目した機能解析を進めた結果、候補転写因子群の中でその相対発現量が最も高かったAP2型転写因子をコードするOsASGR-BBML1が受精卵の発生制御機構へ関与していることが示唆された。 本研究課題の当初計画では、上記遺伝子に加えて、融合後4時間の受精卵のRNA-seq解析データをもとに標的遺伝子群の機能解析を進めることとした。しかし、受精卵発生過程においては、卵細胞から受精卵への変換に伴う卵(受精卵)の活性化や雌雄配偶子由来因子の活性化あるいは不活性化、新規遺伝子発現の開始など、細胞内でダイナミックな変化が起きていると考えられており、受精卵発生機構のさらなる解明に向けては、受精卵を経時的に解析することが必要だと考えた。そこで、報告者は、受精後から雌雄核合一完了までの最初期発生過程の受精卵を経時的にサンプリングし、トランスクリプトーム解析を進めている。本解析によって、未だ未知な点の多い植物受精卵の最初期発生過程における遺伝子発現制御やその分子機構の一端の解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)イネ受精卵中で父性アリル依存的に発現する転写因子群の機能解析:融合後4時間の受精卵内で父性アリル依存的に発現する23 遺伝子が同定された。これら23 遺伝子の中には、AP2 ファミリーやWRKY ファミリーなどの転写因子をコードする遺伝子が存在し、これら父性転写因子群が、受精卵の発生開始・進行の鍵因子として機能することが想定された。そこで、これら同定された父性遺伝子群のうち、転写因子をコードする遺伝子群に着目した機能解析を進めた結果、候補転写因子群の中でその相対発現量が最も高かったAP2型転写因子をコードするOsASGR-BBML1が卵細胞の分裂誘導及び受精卵の発生制御機構へ関与していることが示唆された。
(2)イネ受精卵の最初期発生過程における網羅的かつ経時的な遺伝子発現プロファイルの解析:受精後から雌雄核合一完了までの最初期発生過程の受精卵を経時的にサンプリングし、トランスクリプトーム解析を行った。その結果、イネ配偶子および受精卵の各サンプル反復間で、相対発現量の高い相関性が示された。現在、得られた各サンプルの遺伝子発現データから、受精卵の最初期発生過程で発現変動を示す遺伝子群の解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)イネ受精卵内で片親アリル依存的に発現する遺伝子群の同定:上記トランスクリプトーム解析から同定された、受精卵の最初期発生過程で発現変動を示す遺伝子群について、それら発現のアリル依存性を解析する。具体的には、ジャポニカ品種の日本晴とインディカ品種のカサラスの配偶子融合により作出した交雑受精卵を用いたトランスクリプトーム解析に取り組み、雌雄ゲノム由来の転写産物の発現量を区別・比較する。
(2)微量サンプルからのDNAライブラリーの調製および解析:イネ配偶子や受精卵といった微量試料を用いたエピゲノム解析に向けて、DNAライブラリーの調製・解析を試みる。
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