今年度は、高性能磁気トンネル接合 (MTJ) の実現に向けて、従来のMTJでは埋もれていた、形状磁気異方性を積極活用したMTJの作製および特性評価を行った。まず、形状磁気異方性MTJの基礎特性を理解するために、外部磁界を用い、磁化反転モードの評価及び高温での不揮発性を調べた。これらの結果から、(1) 膜厚が15 nm以下の場合、MTJの磁化反転は応用上好ましい一斉磁化反転モデルに従うこと、(2) 従来の膜厚の薄いMTJと比べ、不揮発性の温度変化が小さく高温での利用に適していること、などが明らかになった。得られた知見から、直径10 nm以下での高い特性を実現するための新構造素子を開発し、直径2.3 nmの素子での不揮発記憶、パルス幅10 nsでの1 V以下のパルス電圧による磁化反転、200℃での10年の情報保持など、高い特性を実証した。
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