研究課題
本年度の研究において,二硫化モリブデン(MoS2)の合成制御と1次元ファンデルワールスヘテロ構造の開発及び太陽電池への応用を行った.まず,低圧化学気相成長(CVD)による半導体性MoS2の合成に着目し,新たにパソコンから管理できる安定性の良い低圧CVD装置を自ら設計・構築した.その後,MoS2のCVD合成の最適条件を探し出した.一般的な合成条件としての酸化モリブデン及び硫黄の量,合成温度,Arキャリアガス流量等を変調して合成結果を考察するのみならず,シーディングプロモーターや合成前駆体等MoS2特有の合成条件にも最適化を行った.そして,最適化したMoS2の合成条件を用い,MoS2-窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)-単層カーボンナノチューブ(SWCNT)という「1次元ファンデルワールスヘテロ構造」の合成に成功した.初めて1次元物質においてファンデルワールスヘテロ構造のコンセプトを実現したことから,共著した論文がScience誌で発表された.1次元ファンデルワールスヘテロ構造は自由に構成材料・カイラリティ・直径・層数を変調することができ,従来の2次元ヘテロ構造と異なり斬新な構造となり,将来の幅広く応用が期待されている.さらに,新規低次元ナノ材料太陽電池の実証実験として,新たに開発された1次元ファンデルワールスヘテロ構造を太陽電池に応用した.MoS2-SWCNTのハイブリッド薄膜を元に,ペロブスカイト型太陽電池を作製した.SWCNTのみのペロブスカイト型太陽電池と比べ,MoS2-SWCNTを用いたペロブスカイト型太陽電池の変換効率は約20%向上し,1次元ファンデルワールスヘテロ構造の優れた物性を証明できた.本研究で得られた成果が複数の国際会議で発表され,学術雑誌にも投稿することを予定している.
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
Science
巻: 367 ページ: 537~542
10.1126/science.aaz2570
Advanced Energy Materials
巻: 10 ページ: 1902389~1902389
10.1002/aenm.201902389
http://www.photon.t.u-tokyo.ac.jp/index-j.html