昨年までの研究により Ultra-Light Axion-like Particle (ULAP) がオシロンという長寿命なソリトンを形成し得ることがわかった。そこで本年は、 形成されたオシロンを用いて ULAP のパラメータ領域に制限をかけることを目的として研究を行い、以下の二つの成果を得ることができた。 一つ目は、オシロンが作る密度ゆらぎのパワースペクトラムの解析解を求めたことである。オシロンは、オシロン形成時のホライズン以下のスケールで大きなゆらぎを作るため、このゆらぎに着目することでオシロンを何らかの観測と結びつけられる可能性があった。そこで、オシロンのゆらぎの作るパワースペクトラムの定量的な見積もりをまずは行い、その結果が数値シミュレーションの結果と一致することを確認した。 二つ目は、21cm 線と呼ばれる、中性水素の陽子・電子間のスピン相互作用によって分裂したエネルギー準位間の遷移によって放出される光子に着目することで、探索可能な ULAP のパラメータ領域に制限を付けたことである。今回は、小スケールの大きなゆらぎ観測手法として、背景光が中性水素に吸収されることによって生じる 21cm 線の吸収線を用いた。オシロンの存在によってこれらの吸収線の量がどの程度変化するかを計算することで、21cm 線の観測によって制限可能な ULAP のパラメータ領域を得ることができた。 以上の結果は、二本の論文として Journal of Cosmology and Astroparticle Physics に掲載されている。
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