2020年度においては2019年度までに直接数値計算を行って収集したデータの解析を行い,論文へまとめて投稿した.また,これまでの研究成果をまとめて,学位取得のために博士論文を作成した.行った解析としては乱流と干渉し,変形した衝撃波の位置を検出し,その位置の変動を衝撃波面の変形と定義し,その変動を統計的に解析することで,乱流との干渉による波面の変形の特性について調査した.特に衝撃波が乱流領域に入射して,乱流中をある程度伝播するまでの遷移的な状態について調査するために乱流と干渉した距離を意味する干渉距離との関係に注目した解析を行った.その結果として,衝撃波面の変形は乱流との干渉と同時に始まり,初期段階においては干渉距離が長くなるにつれて変形が成長するということがわかった.ところが,変形の成長は乱流の大きな渦スケールを意味する積分スケールの数倍程度伝播すると最大値をとり,積分スケールの10倍程度伝播すると定常になることがわかった.また干渉した距離ではなく,時間に対する変化を見ると,定常になるまでの時間などはマッハ数などの条件によって変化したが,干渉初期の変形の時間変化率が条件によらず,およそ一定となることがわかった.さらに変形と局所の強さの関係を調べるため,波面の変動の符号で条件付けした圧力の分布をみると,波面が平均よりも後方に位置している箇所では強くなり,逆に平均よりも前方に位置している場合は弱くなることがわかった. 本研究の意義としては,乱流と干渉した衝撃波の遷移的な状態について定量的な評価ができており,干渉距離に対する波面の変形の変化について明らかにできたことである.既存の数値計算では衝撃波を固定して乱流を流入させていた関係で調査することが困難な部分であり、実験においては計測の困難さから定量的に評価することが難しい現象であった.
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