研究課題/領域番号 |
19J13004
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
梅津 将喜 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 微生物燃料電池 / メタン生成菌 / バイオカソード |
研究実績の概要 |
本研究ではメタン菌カソード微生物燃料電池の高効率化のために、電極上へのメタン菌の高密度配列に焦点を置き、(1)電極表面の化学処理,(2)電圧印加によるメタン菌の選択的集積培養,(3)メタン菌の定着場所となるマイクロサイズ構造体の作製に取り組んでいる。 (1)カーボンフェルト電極に対し7種類の化学的表面処理を行い、メタン菌(Methanothermobacter thermautotrophicus)の付着量を比較したところ、NaOH処理やHCl処理によってM. thermautotrophicusの付着量が有意に増加した。また、処理電極の物理化学的性状を測定した結果、メタン菌の付着性に強く影響すると言われる表面疎水性だけではなく、-OH基や-COOH基といった表面官能基のバランスがメタン菌の付着に関与している可能性が示された。 (2)メタン菌の集積培養のために電圧印加リアクターを複数作製した。すでに試運転を複数回行っており、今後詳細な集積条件の検討を行なっていく。 (3)メタン菌をより高密度に定着させるために、粒子状の炭材やカーボンナノチューブを用いて電極上にマイクロサイズの構造物を作製することを計画している。20 μm前後に粉砕したナラ炭材を用いて電極を作製し、メタン菌の付着培養を行った。カーボンフェルトとは異なりナラ炭材上ではメタン菌が密集して付着しており、炭材を用いた電極を利用することで、より高密度にメタン菌を集積させることができる可能性が示された。カーボンナノチューブにおいても、分散液やフォレスト構造物に対するメタン菌の付着性やメタン活性の評価を始めており、メタン菌に対して毒性の無い分散剤の選択などを行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電極表面の化学処理により、メタン菌の付着量を有意に増加させることができた。また、従来メタン菌の付着性への影響が指摘される表面疎水性だけではなく、-OH基や-COOH基のような表面官能基のバランスが付着性に関与していることが初めて示された。 電極上へのマイクロサイズ構造体の作製については次年度から取り組む計画であったが、粒子状の炭材を用いた電極やカーボンナノチューブ構造体に対するメタン菌の付着培養をすでに開始しており、それぞれの電極で特徴的なメタン菌の付着が起きることを確認している。 一方、電圧印加によるメタン菌の集積培養については、集積に適した電位条件や培養時間を明らかにすることができていないため、早急な検討が必要である。 以上の進捗状況から、おおむね順調に進展していると判断した
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、カーボンフェルト電極に化学処理を行うことでメタン菌の付着量が有意に増加した。また、カーボン材料を用いて電極表面にマイクロサイズの構造体を作製することで、より高密度にメタン菌を集積できる可能性が示唆された。今後はこれらの電極に対して電気化学分析を行うことでメタン菌カソードとしての性能を比較するとともに、特に性能の高かった電極を用いて実際に微生物燃料電池を作製し、発電性能の評価を行なっていく。 電圧印加によるメタン菌の選択的集積培養については、先の試運転により電圧印加条件や性能評価方法が固まってきたことから、早急に最適な培養条件の検討を行う。
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