研究課題
心臓には多種の7回膜貫通型受容体(7TMR)が発現し、重要な役割を果たしている。その多くはG蛋白共役受容体(GPCR)だが、G蛋白と共役しない非定型ケモカイン受容体の役割は不明であった。近年、GPCRのβアレスチン経路が心保護作用を示すことが報告された。ケモカイン受容体CXCR7はβアレスチン経路のみを活性化するβアレスチン偏向性受容体として知られている。このため、心臓におけるCXCR7に着目し、虚血心臓における心保護効果を検討した。まず、成体マウス心臓へのRNA sequencingの結果、心臓で最も強く発現する7TMRはCXCR7であった。一細胞RNA sequencingにより細胞種ごとの発現量を比較した結果、CXCR7は心筋細胞で特に強く発現していた。次に、心筋細胞特異的CXCR7ノックアウトマウス(CKO)の心筋梗塞モデルを作成した所、CKOマウスでは梗塞後4週目において有意な心拡大と心収縮能低下を認め、CXCR7による心保護効果が示唆された。この機序を調べるために、培養心筋細胞を用いて、CXCR7の下流にERK活性化があり、抗アポトーシス作用により細胞死を抑制している可能性が示唆された。マウス梗塞心臓では境界領域でCXCR7発現増加とERK活性化を認めたが、CKOではERK活性化が減弱していた。ヒト心不全組織においてもCXCR7発現が増加しており、CXCR7と心不全の関連が示唆された。CXCR7は心筋細胞に豊富に発現し、心筋梗塞境界領域でのERK活性化を介して細胞生存に働き、心筋梗塞後リモデリングを抑制する事を示した。CXCR7は心筋梗塞治療の新たな標的となる可能性がある。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Scientific Reports
巻: 11 ページ: -
10.1038/s41598-021-83022-5