研究課題/領域番号 |
19J13071
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
真野 智之 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 組織透明化 / データベース / 脳レジストレーション / クラウド / システム生物学 |
研究実績の概要 |
本研究では,組織透明化技術によって得られたマウス全脳イメージングデータをより精緻に解析するためのアルゴリズム・ソフトウェアの開発を進めている.特に,形状が微妙に異なる複数の脳を位置合わせ(レジストレーション)し,定量的なマウス個体間の脳の比較の実現を目指している.また,本ソフトウェアの実用性の証明として,マウスの各細胞種の全脳マップの作成や,ウイルストレーサーを用いた神経回路接続の解析,などの実験を行っている.
本研究で使用しているマウスの全脳レジストレーション手法は,多大な計算コストがかかり,解析のスループットが限定されていた.加えて,パラメータの調整などアルゴリズムの深い理解が必要であり,一般的な生物学研究者が利用するにはハードルが高いものであるということがわかった.この問題を解決するため,Amazon社が提供しているクラウド・コンピューティングを利用した,クラウドベースのレジストレーションソフトウェアを開発した(CUBIC-Cloud と命名).ソフトウェアは80%ほど開発が終了し,2020年度の前半に公開できる見込みである.クラウドを利用することで,潤沢な計算資源を持たない研究者であっても,ハイスループットに解析が行うことができる.また,パラメータの調整なども自動で実行できるように設定した.加えて,本ソフトウェアは,クラウドの利点を活用した,データベースとしての機能も提供する.これにより,研究者はレジストレーション後のデータを世界に公開することができる.透明化によるマウスの全脳データを自動でレジストレーションし,データベースとして公開する仕組みはまだ世界で報告がなく,透明化研究の分野に新しいオープンデータサイエンスの枠組みを提案できると期待している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで,CUBIC-Cloudソフトウェアの開発に注力しており,およそ八割程度のプログラムが完成した.また,ソフトウェアの実証として用いるマウス全脳データの取得を行っている.第一に,PV/SST/ChAT/Th/Iba1などの細胞種マーカーの免疫染色を行った全脳データを取得し,解析を行っている.第二に,神経活動マーカーであるc-Fosの免疫染色を行うことで,全脳スケールでの神経活動の再構成に取り組んでいる.第三に,共同研究として,狂犬病ウイルスを用いた神経回路の全脳解析を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,CUBIC-Cloudの完成に向けた開発を引き続き続行し,2020年度中の公開を目標としている.公開後は,さらに多くのマウス全脳データの取得を進め,さらなるデータベースの拡張をはかる.具体的には,細胞種の全脳マップを,異なる週齢のマウスにも拡大し,発達に伴って脳の細胞がどのように変化していくのか,包括的な解析を行うとともに,そのデータセットをCUBIC-Cloudを通じて公開する.
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