研究課題
共生細菌Wolbachiaが茶樹害虫チャハマキのオスを殺す機構の解明を本研究の目的とした。安定した食糧の確保や感染症のまん延を防ぐため、「微生物」を用いた害虫のコントロールが注目されている。なかでもWolbachiaは多様な昆虫に感染し、さまざまな繁殖操作を引き起こすことから害虫防除への応用が進められている。Wolbachiaが引き起こす繁殖操作の一つに昆虫のオスのみを致死させる『オス殺し』がある。しかし現在までWolbachiaがオスを殺す機構:オス殺し遺伝子の存在、オス殺し分子メカニズム、オス殺し形質の進化経緯は明らかでなかった。申請者は新たにチョウ目チャハマキと複数のWolbachia株を用いたオス殺し研究系を樹立し、Wolbachia株間の比較ゲノム解析と遺伝子機能解析およびチャハマキとWolbachia双方の遺伝子発現解析から、Wolbachiaがもつオス殺し候補遺伝子とその制御機構を探索した。さらに近縁ハマキガ科昆虫-Wolbachia株間での表現型と遺伝子多型からオス殺し形質の進化を探索した。その結果、2019年度に得られたオス殺しWolbachia wHm-t株のドラフトゲノムをもとに、Wolbachiaがもつオス殺し関連ゲノム領域を推定することができた。この領域に座乗する病原性遺伝子の機能解析も進めることができた。さらにオス殺しWolbachia感染チャハマキの遺伝子発現・代謝・細胞レベルで生じる影響を明らかにできた。また近縁のハマキガ科昆虫にwHm-t近縁株が感染していることを特定できた。これら一連の研究によって得られた成果は、国内学会での発表、学術論文、および博士学位論文としてまとめ報告した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
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