本研究は、初期胚の質を評価するために重要な胚のふるまいにおける特徴を発見し、初期発生胚の質を評価する手法を新たに確立することを目的としている。 上記課題に対して、まずは初期胚のふるまいを特徴付ける指標を定量化するための手法を確立する必要があった。そこで、ライブセルイメージングにより生きたまま観察したマウス初期胚の画像から、初期胚のふるまいを定量化した指標を抽出するための画像解析アルゴリズムであるQCANetを開発した。QCANetは画像に写っている物体の位置や形状を推定する画像解析技術であるセグメンテーションを行うアルゴリズムであり、マウス胚の細胞核セグメンテーションにおいて、世界最高精度のセグメンテーションアルゴリズムである3D Mask R-CNNを上回る精度を達成した。さらに、このQCANetによりマウス初期胚のふるまいを正確に定量化することに成功した。この成果は、学術雑誌 npj Systems Biology and Applications誌に掲載された。 これにより初期胚のふるまいを定量化するための基盤技術が整ったため、次のステップとして出生・非出生のラベルが施されたマウス初期胚のふるまいをQCANetにより定量し、その定量データを入力として出生・非出生を分類するアルゴリズムを構築した。提案アルゴリズムによる出生胚と非出生胚の分類は既存手法を上回る精度を達成した。さらに提案アルゴリズムの特徴として、分類を行った際の入力データにおける注目度合いを数値化できることが挙げられる。この特徴を利用することで、胚の出生・非出生を決めうる重要な指標を獲得することに成功した。この成果は現在論文投稿準備中である。
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