本研究では,センサレス切削力推定を応用したびびり振動監視に基づき主軸回転数などのプロセスパラメータを実時間制御することで,付加的センサやアクチュエータ無しに,機械加工における最重要課題の一つであるびびり振動を自律抑制する知能化工作機械システムの開発を目的とした.最終年度である令和2年度では,特に(1):正弦波主軸速度変動(SSSV)による自律型びびり振動抑制システムの開発,(2):パラレルエンドミル加工における主軸回転速度差制御による自律びびり振動抑制に取り組んだ. (1)に関しては,びびり周波数に基づくSSSVの最適設計理論は前年度に構築済みである.本年度は,推定切削力を利用したびびり振動監視と,それに基づく最適SSSVによるびびり振動抑制の一連の機能を大型工作機械に実装・統合した.その結果,推定切削力から加工中にリアルタイム推定したびびり振動周波数に基づきSSSVをin-situ最適設計し,工作機械がびびり振動を自律的に抑制可能であることを確認した.また,提案したSSSVの理論を応用し,パラレル旋削加工における揺動加工法(上下工具を工作物円周上に揺動運動させることでびびりを抑制する加工法)の最適設計にも展開させた. (2)におけるパラレルエンドミル加工では,びびり周波数に基づき計算されるびびり振動位相差が上下工具間で逆位相になるように主軸回転数差を与えることで,びびり振動をキャンセレーションすることを試みた.パラレルエンドミル加工におけるプロセスモデル・時間領域シミュレーションを構築し,その有効性を理論的に解析するとともに,加工中の推定切削力からリアルタイム推定したびびり周波数に基づき回転数差を適応制御するシステムをマルチタレット工作機械に実装した.その結果,加工状態の変化(つまり,びびり周波数の変化)に対応しながら,びびり振動をロバストに抑制可能であることを確認した.
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