研究課題/領域番号 |
19J13223
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西 信哉 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 鳥類病原性大腸菌O1 / 複合糖質ワクチン / 糖鎖合成 / β-ラムノシド / グリコシル化反応 / 位置選択的 / 立体選択的 / ボロン酸 |
研究実績の概要 |
鳥類病原性大腸菌(APEC)は、養鶏産業に多大な経済的損失をもたらす病原菌であり、多剤耐性を有することから、近年問題視されている。とりわけ、APECの主要な血清種であるAPEC O1は、敗血症などで人の生命を脅かす病原性大腸菌とゲノムが酷似していることから、人獣共通感染症を引き起こすことが懸念されており、APEC O1に対するワクチン開発が注目されている。そこで本年度は、(1)APEC O1糖鎖抗原候補五糖鎖誘導体の合成、及び(2)ワクチンを志向した複合糖質の合成を目的として研究を行った。 (1)はじめに、APEC O1糖鎖抗原候補五糖鎖誘導体の合成を行った。まず、自身の開発したボロン酸触媒を用いた位置及び立体選択的β-ラムノシル化反応を駆使することで、APEC O1糖鎖抗原候補糖鎖の有する構築困難なβ-ラムノシド結合を完全な位置及び立体選択性で構築した。次に、合成したβ-ラムノシドに対し、グリコシル化反応を含む各種誘導化を行うことで、APEC O1糖鎖抗原候補五糖鎖誘導体の初の合成を達成した。 (2)次に、APEC O1に対するワクチンを志向した複合糖質の合成を行った。すなわち、上記(1)で合成したAPEC O1糖鎖抗原候補五糖鎖誘導体をキャリアタンパク質であるBSAに複合化することで、複合糖質ワクチン候補物質を合成した。 これまでに、インフルエンザ菌や肺炎球菌などの病原菌由来糖鎖とキャリアタンパク質との複合体が、各病原菌に対するワクチンとして実用化されていることから、合成した複合糖質がAPEC O1に対する複合糖質ワクチンとして機能することが大いに期待される。したがって、今後、合成した複合糖質の機能評価を行い、APEC O1に対する複合糖質ワクチンとして機能するかを明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画として、2019年度は、(1)鳥類病原性大腸菌(APEC) O1糖鎖抗原候補五糖鎖誘導体の初の合成、及び(2)ワクチンを志向した複合糖質の合成を目的としていた。したがって、(1)及び(2)を達成した2019年度の研究進行状況は、当初の予定通り、順調に進行しているといえる。また、2020年度に実施を予定している複合糖質の糖鎖構造に関する構造活性相関研究の準備も進めており、鳥類病原性大腸菌 O1に対する抗血清の作製に成功している。すなわち、ニワトリに対し、APEC O1を生後10日及び24日に経口投与し、生後38日目に全採血することで血清を得た。次に、得られた血清とAPEC O1固定化プレートを用いたELISAアッセイを検討した。その結果、今回調製した血清中にAPEC O1に結合する抗体が存在していることを確認することに成功した。以上の結果を受け、次年度の2020年度は、(1)本抗血清と合成複合糖質を固定化したプレートとを用いたELISAアッセイを検討することで、合成複合糖質が抗原として機能するかを評価する。さらに、(2)APEC O1に対する複合糖質ワクチンとして機能するかを明らかにする予定である。以上、本年度は、2019年度研究計画の遂行に加え、2020年度実施予定の研究準備が十分行えていることから、本研究は順調に進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究成果を踏まえ、本年度は以下のような研究方策で研究を行う。 (1) 2019年度に合成した複合糖質が有する糖鎖が鳥類病原性大腸菌(APEC) O1の抗原となり得るかを、複合糖質を固定化したプレート及び2019年度に調製した抗血清を用いたELISAアッセイにより評価する。 (2) 2019年度に確立したAPEC O1抗原候補五糖鎖の合成法を応用し、糖鎖長の異なるAPEC O1糖鎖抗原候補糖鎖を合成する。次に、キャリアタンパク質であるBSAとの複合化及び(1)と同様の評価を行うことで、APEC O1の抗原となり得る最小の糖鎖構造を明らかにする。 (3) (2)で見出した糖鎖構造を有する複合糖質をニワトリに投与し、血清を得る。続いて、得られた血清とAPEC O1を固定化したプレートとを用いたELISAアッセイにより、抗体の産出を評価する。これにより、合成複合糖質がAPEC O1に対する複合糖質ワクチンとして機能するか検証する。
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