研究実績の概要 |
研究目的は, プラズマ中のラマン増幅を記述する非線形シュレディンガー方程式系の解の挙動を決定づける初期値を分類することである. 線形効果が強いとき生じる線形方程式の解に漸近する散乱解, 非線形効果が強いとき生じるあるところに集中する爆発解, 線形性と非線形性が釣り合うときに生じる定在波解を取り扱う. 大阪大学の眞崎聡氏と共同研究を行い, 質量劣臨界の非線形シュレディンガー方程式系の解析を行った. 散乱のシャープな基準を導入する際, 非線形項の構造から自明な散乱解が零解だけではないことに注目し連立系ならではの基準の測り方を導入した. 散乱のシャープな基準と散乱ノルムを用いた基準の間にある関係性を明らかにした. さらに, 基準を達成する解の存在や基準に近づく解の列の性質についても調べた. エネルギー臨界の非線形シュレディンガー方程式系については, 十分小さい初期値に対する解は散乱する, 散乱における安定性に関する補題, 基底状態のエネルギーより小さいエネルギーをもつ解のビリアル汎関数(解の分散性を表す)の評価を証明した. 現在, プロファイル分解の証明を行っている途中である. 理化学研究所の池田正弘氏と共同研究を行い, 線形ポテンシャルをもつ非線形シュレディンガー方程式について, 定在波解が存在するためのポテンシャルの十分条件を与えた. さらに理化学研究所の池田正弘氏とともに, 上記で得られた定在波解がビリアル汎関数で特徴づけられるための十分条件を与えた.
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今後の研究の推進方策 |
まずエネルギー臨界の非線形シュレディンガー方程式について, 基底状態のエネルギーより小さいエネルギーをもつ初期値に対する解が散乱するための必要十分条件を得る. その後, 質量超臨界, エネルギー劣臨界の非線形シュレディンガー方程式系について, 基底状態の作用と等しい大きさまたはより大きい作用をもつ初期値を扱う.
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