本年度は,「グラフの再埋蔵理論」と「グラフの彩色問題」との関連について研究に大きく進展があった. Kundgen・Ramamurthi(2002)によって提唱された「weak chromatic numberがいくらでも大きく異なるような同じグラフの異なる埋め込みが同一閉曲面上で存在するか」という予想を肯定的に解決した.また,研究者協力者として東京理科大学の野口氏に加わっていただき,研究をさらに発展させることに成功した.具体的には,当初,予想の肯定的な解決を与えるためのグラフの構成例として単純でないグラフを扱っていたが,単純グラフにおいても予想を肯定するグラフの構成例を構築できた.また,3以上の任意の整数kに対してweak chromatic numberがちょうどkである三角形分割とkより小さい三角形分割を両方持つグラフが存在することを証明した.一方で,weak chromatic numberがちょうど2である三角形分割を持つグラフはほかの三角形分割を持ったとしても,必ずそのweak chromatic numberも2であることを証明した.以上の結果を論文としてまとめたものは学術雑誌に受理された. また,横浜国立大学の大野氏とともにfacial complete coloringと呼ばれるグラフ彩色 に対してもグラフの再埋蔵との関連の研究を行った.それらの結果をまとめた論文は現在,学術雑誌に投稿中である. 以上のように,「グラフの再埋蔵理論」と「グラフの彩色問題」を融合させるという新たな視点から研究を大きく進展することに成功した.
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