研究実績の概要 |
X線連星に見られる降着円盤風の駆動機構を明らかにするために研究を進めてきた。本研究では円盤風の駆動機構が中心天体近傍からのX線が円盤表面に照射され,そのX線によりガスが加熱,加速される駆動機構を仮定している。この仮定が実際の天体で主要なメカニズムであるのかを調べるために,放射流体シミュレーションにより密度,速度分布を得るとともに,そこを通って作られる輝線吸収線構造を計算し,観測と比較するということを行ってきた。この方法により中性子星低質量X線連星であるGX 13+1に存在する円盤風が,仮定した駆動機構でよく説明できることを明らかにした。本年度はこの論文がMonthly Notice of the Royal Astronomical Society誌に受理された。 さらにこれまで扱ってきた光学的に薄い円盤風ではなく,光学的厚みが1程度の散乱の効果が無視できない円盤風を扱うために,シミュレーションコードの開発を行った。特に今年度は,放射流体シミュレーションにその効果を取り込むことを進めた。1次元のテスト計算において,放射のエネルギー密度の計算がうまくうごいていることを確認している。今後この計算を2次元に拡張し,本計算を行う予定である。 また詳細な輝線吸収線構造を計算するためのモンテカルロ放射輸送コードにおいても,共同研究者とともに開発を進めている。これまでこのコードは,高電離イオン(H-, He-like)からの輝線吸収線構造をだけを取り扱っていたが,より低電離なイオンによる吸収,再放射を取り扱えるようにイオンのデータベースの拡張を進めている。他の既存の放射輸送コードと比較することで,作られる吸収線構造がよく計算できていることを確認している。
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