研究課題/領域番号 |
19J13386
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
設樂 勇 日本工業大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | ドローン / アクセス制御 / クロスレイヤ / 中継伝送 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ドローン用メッシュネットワーク(NW)実現のための,飛行構成に基づく高効率なアクセス制御プロトコルを考案することである.ドローンNWにおいて通信効率を低下させる要因は,ドローン間の相互干渉や宛先より先のドローンへの干渉となるオーバリーチ干渉がある.そこで採用1年目は指向性ビームを用いたドローンNWにおいてオーバリーチ干渉を低減するMAC(Medium Access Control)層のアクセス制御プロトコルの検討を進めた.また,ドローンNWは都市部の構造物の密集する環境や平地,山間部等の様々な伝搬環境で運用が想定されることから,物理層の物理伝搬から上位層のアプリケーションまで統合して評価可能なレイヤ統合シミュレーションツールについても併せて検討を進めた. 本年度の研究実績としては,指向性ビームを用いた際のオーバリーチ干渉を解決するために,昨年度から検討していた協調中継アクセス制御方式の見直し/評価を行った.提案方式はオーバリーチ干渉を避けるために中継可能な最も遠いドローンまで一度の通信でフレーム伝送し,その通信区間に存在する協調ドローンも送信局のフレームを受信/保持する.フレームが誤った場合は,協調ドローンがフレームの再送を代行することによって通信効率およびNWのリソース低下を防ぐ.これにより提案方式は従来の1ホップ中継と比較して高いスループットを得られることを確認した.今後はフレーム損失時の再送代行アルゴリズムを精査していく. レイヤ統合シミュレーションツールについては,レイトレースツールとMATLABにて送受信局間の受信電力を算出し,上位層シミュレータのOPNETと連携するツールの検討した.本年度は無指向性アンテナを搭載したドローンNWにて本ツールが正常に動作していることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年次計画で予定していたようにオーバリーチ干渉によるスループット低下を解決するためのアクセス制御方式の再検討を行い当該方式の評価を行った.また,評価結果からも概ね良い特性が確認できている.しかし,当初次年度に予定していた提案方式を無線デバイスに実装して実際にドローンを飛行させる実験は,提案方式の無線デバイスへの実装が難しいとがわかった.したがって本年度は実験に係る準備は行わなかった.その実験の代替案として物理層の物理伝搬から上位層のアプリケーションまで統合して評価可能なレイヤ統合シミュレーションツールについて検討を進めた.本年度はレイトレーシング評価を基にMATLABにて送受信局間の受信電力を計算しMAC層におけるフレーム損失の判定に用いるよう評価ツール作成した.本評価ツールにより次年度に実機実験に近い評価を行うことが可能となる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は本年度検討を進めた協調中継アクセス制御方式のフレーム損失時の再送代行アルゴリズムを精査し,より高効率なアルゴリズムを考案し詳細な評価を進める予定である.また,当初はシミュレーションに加えて実機実験により提案方式の有効性を確認する予定であったが,計画を変更しレイヤ統合シミュレーションツールにより評価を行っていく.また,レイヤ統合シミュレーションツールについては,現在無指向性のみの対応となっており,有指向性/複数ビームに対応していない.そのため次年度は指向性および複数ビームによる複数経路に対応するべく評価ツールの改良を行う.その後,提案方式である協調中継アクセス制御方式を評価ツール上に実装し物理伝搬からアプリケーションを考慮したクロスレイヤでの方式評価を行う予定である.
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