本研究の目的は,ドローンネットワーク実現のために高効率なアクセス制御プロトコルを考案し,実環境においても高通信効率を実現することである.ドローンネットワークの通信効率低下の要因として各ドローンの相互干渉や宛先ドローンよりも先のドローンへの電波が到達することによるオーバリーチ干渉などがある.本研究ではこれらの問題を解決するために,指向性ビームを使用したドローンネットワークのオーバリーチ干渉を低減するMAC(Medium Access Control)層のアクセス制御プロトコルの検討を行ってきた.本年度は昨年度に検討を行っていた提案技術のアクセスプロトコルの見直しを行った.これまでのアクセス制御では中継ドローンは受信電力から自身を中継ドローンか否かを判断していたため,中継距離が遠くなると各ドローンの受信電力差が小さくなり中継時に競合する場合があった.そこでこの課題を解決するために,中継時のアクセス制御にCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式に使用されているバックオフアルゴリズムを用いることで各ドローンの受信電力差が小さい条件でも中継ドローンが競合せずに中継可能な方式を検討した.これにより中継ドローンの競合を回避できるほか,従来の1ホップ通信と比べて約2倍スループットが向上することを確認した. また,昨年度に引き続き提案方式を評価するためにレイヤ統合シミュレーションツールの開発も併せて行った.本年度は物理層のレイトレースシミュレータを変更することで,ガードインターバル長を超える伝搬遅延波の影響を含めて評価可能となった.これにより,従来評価が難しかった現実環境に近い条件での計算シミュレーションが可能となる.
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