研究課題/領域番号 |
19J13438
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
疋田 弘之 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | カイコ核多角体病ウイルス / シャットオフ / Bm8 / トランスクリプトーム解析 |
研究実績の概要 |
バキュロウイルスに感染したチョウ目昆虫の幼虫では感染の末期に行動異常が生じることが知られている。感染幼虫は行動が異常に活性化し、かつ上方への走性が高まり枝先などの高所で死亡する。この過程でウイルスはより広い範囲に子孫を拡散することができると考えられている。しかし、ウイルスによるこの行動操作の詳細なメカニズムは不明である。先行研究からウイルスは虫体内での感染進行を精密に制御することで行動操作を実現している可能性が示されていた。一方、多くの先行研究が培養細胞を用いた研究をメインとして行なっており、虫体内におけるウイルス感染動態に関する知見は十分とは言えない。本研究では、バキュロウイルスが培養細胞で見せる宿主遺伝子発現制御機構を明らかにするとともに、その機構が感染幼虫の組織において同様に働いているかを明らかにすることを目指している。本年度はカイコを宿主とするカイコ核多角体病ウイルス(BmNPV)において、ウイルスの感染・増殖組織の特異性を決定するウイルス因子であるBm8タンパク質について変異体の作製、および表現型解析を行った。その結果、Bm8の機能に重要なアミノ酸残基を特定した。また、バキュロウイルスが感染細胞内において引き起こす大規模な宿主遺伝子の発現低下(宿主シャットオフ)に関して、トランスクリプトーム解析を行った。それにより、宿主シャットオフに関わると考えられる宿主の細胞機能を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トランスクリプトーム解析からシャットオフを引き起こす分子機構に関して、重要とみられる宿主の細胞機能を見出した。これは、長きにわたって謎であるバキュロウイルスの宿主シャットオフ機構を解明する上で非常に重要な知見である。また、Bm8の機能解析から、重要なアミノ酸残基の特定に至った。これにより、Bm8の作用機序の解明が大きく進むと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、見出されたシャットオフに関わる宿主細胞機能に注目して、追加のトランスクリプトーム解析などから、シャットオフとの関連性を実証する。また、Bm8に関して、変異体の表現型解析から同定されたアミノ酸残基についてタンパク質機能との関連性を調査する。
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