ミトコンドリアの形態変化を通じて制御される機能変化が放射線感受性を修飾しているのではないかと考え、複数のミトコンドリア形態制御因子に着目し、これが細胞の放射線感受性に与える影響ならびに、その感受性変化メカニズムを明らかにすることを目的にin vitroレベルでの検討を行った。ミトコンドリア形態制御因子を安定的にノックダウンしたマウス乳がん由来EMT6細胞を作出し、放射線感受性を評価したところ、ミトコンドリア分裂制御因子であるDrp1およびFis1 KD細胞では放射線感受性が有意に低下していた一方で、ミトコンドリア融合制御因子であるMfn2およびOpa1 KD細胞では感受性に変化はなかった。このことから、放射線による細胞死にはミトコンドリア分裂が重要であることが示唆された。そこで、Drp1およびFis1 KD細胞で観察された感受性の変化を引き起こすメカニズムを明らかにすることを試みた。その結果、Drp1およびFis1 KDは分裂期崩壊による細胞死を一部抑制した。さらに、Ca2+キレート剤のBAPTA-AM処理による放射線照射後の分裂期崩壊を低減したことから、Ca2+が分裂期崩壊誘導に寄与していることが示唆された。さらに、X線照射が細胞内[Ca2+]iに与える影響を評価したところ、放射線が細胞内[Ca2+]iを増加させる一方で、ミトコンドリア分裂の抑制がこの増加を抑制することが明らかとなった。まとめると、放射線照射後にミトコンドリア分裂が亢進することで細胞内[Ca2+]iが増加し、これが分裂期崩壊の誘導に寄与することが示唆された。本年度の研究実施によりin vitroでのミトコンドリア形態変化を介した細胞死を修飾するミトコンドリア機能変化を明らかにすることができた。
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