褐色腐朽菌オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)による木材腐朽は光照射によって促進されることが知られている。本研究では褐色腐朽菌の光応答を明らかにすることを目的に研究を行った。種々の光条件下においてオオウズラタケによるスギ辺材の腐朽試験を行い、菌の成長や木材腐朽力に与える光の影響を評価した。その結果、寒天培地上では遮光下において最も菌糸が速く拡がり、次いで、赤色光において速く拡がった。また、白色光および青色光下では菌糸の拡がりは遅かった。一方で、菌糸重量に関してはどの条件においても大きな差は認められなかった。さらに、単位面積あたりの菌糸重量を算出したところ、白色光下で最も値が大きく、菌糸が厚く成長しており、反対に遮光下では菌糸が薄く成長していることが明らかになった。菌糸の見た目についても光条件間で様子が異なり、光が菌糸成長に及ぼす影響は大きいと示唆された。 スギ辺材の腐朽試験を行った結果、木材サンプル表面の菌糸は腐朽1週目においては、光条件間で大きな差は確認されなかったが、腐朽が進むにつれて、遮光以外の条件では菌糸が成長し、寒天培地上での菌糸成長と同じような結果が得られた。また、遮光下では1週目以降木材サンプル表面の菌糸が成長しなかった。木材腐朽力に関しては、白色光下で最も腐朽が進行し、遮光下では最も腐朽が進行しなかった。さらに赤色光および青色光下でも腐朽が進行したことから、どちらの光も腐朽に関与していることが示唆された。
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