研究課題
褐色腐朽菌オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)による木材腐朽は光照射によって促進されることが知られている。本研究では褐色腐朽菌の光応答を明らかにすることを目的に研究を行った。2019年度に行った腐朽試験後に得られた腐朽材の顕微鏡観察を行った。走査型電子顕微鏡による腐朽材内部の観察の結果、木材の質量減少が確認できない腐朽初期においても菌糸が木材中に確認でき、光条件の違いによる差はなかった。このことから、腐朽材中の菌糸量と質量減少率には相関がないことが明らかとなった。また、褐色腐朽菌が木材中に菌糸を蔓延させる際に重要となるペクチン分解に注目し、ルテニウムレッドにより腐朽材中のペクチンを染色して光学顕微鏡を用いて観察した。ペクチンの分解においても光条件間では差がみられず、どの条件においても質量減少が起こる前に有縁壁孔のトールスに存在するペクチンは消失していることが明らかになった。その一方で、細胞間層のペクチンは腐朽が進行しても消失しないことから、細胞間には菌糸が侵入していないことが示唆された。また、寒天培地上で成長させた菌糸において、ペクチン分解酵素の発現量をリアルタイムPCRにより分析したところ、白色光下と比較して、遮光下ではペクチン分解酵素の一つであるポリガラクツロナーゼの発現量が約4倍になることが明らかになった。このペクチン分解酵素の発現上昇は、光が届かない木材中においてはペクチンの分解を促進し、菌糸が木材中に蔓延するのに貢献していると考えられる。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Protein Expression and Purification
巻: 170 ページ: 105609~105609
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