研究課題/領域番号 |
19J13664
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
佐藤 真央 高知大学, 総合人間自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
キーワード | 側線系 / 感丘 / 側線神経 / テンジクダイ科 / コモリウオ科 |
研究実績の概要 |
魚類は,側線系の感覚器である感丘によって周囲の水流を知覚する.感丘の分布パターン(体のどこに・どの程度あるか)は分類群によって異なり,多様である.本研究では,科内において多様な感丘の分布パターンを示すテンジクダイ科魚類に注目し,どのような形態的変化や系統的背景を経てパターンが多様化したか議論する.本年度は,本科魚類を族(一部は属)レベルで網羅的に採集し,各種においてDiASP生体染色により全感丘を観察した.さらに,ズダンブラック染色により側線神経を観察し,種間において感丘の分布パターンに相同性があるか(種間で同様な神経の分岐パターンによって感丘が支配されているか)を明らかにした.本科の姉妹群とされるコモリウオ科については,電子顕微鏡により感丘を観察した.その結果,ほとんどの族(あるいは属)において表在感丘は頭部,側線鱗および尾鰭にのみ生じていた.一方,5属においては表在感丘が全身に生じており,そのパターンも属間で異なっていた.神経の観察から,本科では少なからず系統の2ヶ所において,全身に表在感丘をもつ形質が出現したと示唆された.さらに,それぞれの系統内において二次的に感丘の位置が変化することで,5属にみられる多様な感丘の分布パターンが生じたと示唆された.特に,無鱗化,幼形進化,および鱗の増加は,表在感丘の位置を大きく変化させ,パターンの多様化に寄与したと考えられる.全身に表在感丘をもつ特徴は,本科の姉妹群であるコモリウオ科との共有派生形質(すなわち,本科にとって祖先型)である可能性もあったが,派生的な感丘要素を支配する神経小枝は科間で異なっていたため,その特徴は両科の収斂と判明した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの採集調査により,テンジクダイ科の主要なグループを族レベルで網羅した知見を蓄積できた.さらに,代表的な種においては側線神経の分岐パターンを詳細に観察・スケッチできた.コモリウオ科の観察は難航すると予想されていたが,博物館収蔵標本を仔細に観察することで十分なデータが得られた.系統的位置が不明確であった一部の属については,mtDNAと核DNAのそれぞれ2領域をシーケシングし,分子系統樹上における位置を明らかにできた.全身に表在感丘をもつ種において,幼魚から成魚までを段階的に観察し,特殊なパターンがどのように形成されるかも観察できた.本年度の目的は十分達成できたといえる.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに収集した標本を解剖し,感丘の機能に関わる形態的特徴に種間差がないか明らかにする.
|