研究課題/領域番号 |
19J13673
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
岡野 徳壽 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | Inflammasome / 歯周炎 / 低酸素 / 病原細菌 / IL-1β / Caspase-1 |
研究実績の概要 |
近年の研究の成果により、炎症性サイトカインの一つであるIL-1βの成熟化、および細胞外への分泌を制御しているインフラマソームと呼ばれるタンパク質複合体が歯周炎の病態形成に重要である、という知見が得られている。申請者は新たな知見として、歯周炎関連細菌Porphyromonas gingivalis(Pg)がマクロファージ細胞等へと感染すると、通常酸素にて培養した時と比べて、低酸素状態で培養したときの方がインフラマソームの活性化が亢進されることを見出した。 この「低酸素特異的なインフラマソーム活性化亢進メカニズム」を解析するために、遺伝子発現レベルでの大規模解析を行うこととした。まずPgを感染させたマウス骨髄由来マクロファージ(BMDMs)を通常酸素、または低酸素状態で培養し、RNA sequencing法を用いてそれぞれ異なる条件で培養された細胞の発現遺伝子の網羅的解析を行った。その結果、約300遺伝子の発現上昇が見られた。その中でも低酸素誘導因子の1つであるHypoxia inducible factor 1α (HIF-1α)に関連する遺伝子群が顕著に発現亢進していることを見出した。そこで東京大学医科学研究所の坂本毅治先生から骨髄細胞特異的にHIF-1αを欠損したマウス由来の骨髄細胞を分与して頂き、Pgによる低酸素特異的なインフラマソームの活性化亢進について検証した。その結果、HIF-1α欠損BMDMsへPgを感染させても低酸素特異的なインフラマソームの活性化亢進は引き起こされなかった。この結果から、Pgは低酸素時において、HIF-1α依存的にインフラマソームの活性化を亢進していることが示された。今後更なる解析を行うべく、HIF-1αによって制御されているHIF-1α Response Elements遺伝子群で重要な遺伝子について解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は低酸素特異的なインフラマソームの活性化亢進を制御している宿主因子群を見出し、さらに網羅的解析を行なったことで、細胞へ引き起こされている現象の大部分を捉えた。また、2019年度に得られた研究成果を国内、および国際学会にて発表したところ、各国の研究者から様々な意見を頂き、本研究の発展に活かすことができた。 以上の理由により本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はこれらの結果をもとに動物実験へと発展させ、細胞レベルのみならず、動物実験レベルでのインフラマソーム活性化亢進の生理学的な機能を調べていく予定である。
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