本研究では、Porphyromonas gingivalis (Pg)による低酸素条件特異的にインフラマソームの活性化が亢進するメカニズムを解明する足掛かりとして、インフラマソームの活性化を亢進させている細菌のリガンド、および宿主側のインフラマソームの活性化に関連している遺伝子とシグナル伝達経路の同定を目指す。具体的には、(1)Pg遺伝子欠損変異株の作製後、骨髄由来マクロファージへの感染と解析、および(2)低酸素特異的なインフラマソームの活性化に関連する遺伝子を発現しないノックアウトマウス(KOマウス)の作製、およびその解析を行う。本研究が完成すれば、低酸素環境、つまり生体内での酸素レベルに近い状態での炎症の制御機構の解明に貢献することができると考えられる。生理的に模倣した条件であるという意義を考慮すると、この解明は非常に重要度が高い。 2019年度に引き続いて2020年度は活性化亢進に必須の遺伝子として、TIR-domain-containing adapter-inducing interferon (TRIF)を同定した。またTRIF欠損マウスを導入し、骨髄由来マクロファージにおいていくつかの低酸素誘導因子の遺伝子発現レベルが低下していることも見出した。現在動物モデルを用いてPorphyromonas gingivalis 感染における自己免疫疾患について生理的意義を解析中である。本研究では、TRIFが低酸素環境特異的に発現誘導している遺伝子群を世界で初めて見出した。 これらの研究成果は2021年2月に行われる第94回細菌学会ワークショップ8「低酸素環境と疾患(がん、感染症)の分子論」にて発表することが決定している。さらに、2021年3月に学術雑誌へと投稿予定である。
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