研究課題/領域番号 |
19J13686
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
YACHONGKA VAMOUA 電気通信大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 生体識別システム / 理論限界 / 個体数 / 秘密情報 / プライバシー保護 |
研究実績の概要 |
従来研究のシステムモデルでは,性能評価を簡単化するため,登録過程の雑音を考慮しないシステムを解析していた.しかし, その仮定は現実的なシステムからかけ離れている.例えば,データベースに登録される生体情報は必ずスキャナー等を介して採取されるため,サンプリングされたテンプレートは生のデータと一致しているとは考えにくい.そこで,昨年度の研究計画は、従来研究のシステムモデルをより現実的な環境に近づけるため,二つのフェーズに分けて研究を進めていた. 第一段階は登録過程の雑音を考慮し,生体情報から秘密通信等に用いる秘密鍵が抽出されるシステムにおける最適な性能を解析する.具体的には,生体識別システムにおいて,登録可能な個体数(利便性),識別を誤ってしまう確率(信頼性),記憶媒体の節約(効率性),及び個体の固有生体情報の保護(安全性)の四つの関係性を明らかにする.それから,その秘密鍵が生体情報とは独立的に選択されるシステムの性能を検証し,その場合における生体識別システムの利便性,信頼性,効率性,及び安全性の関係性を明らかにする.その後、第二段階に移行する.初期段階で考えていた安全性の評価方法は情報の漏洩率が符号語系列の長さに比例し,増加していくことを許容していた.但し,この評価方法は符号語の系列長が長くなるにつれて,漏洩率も上がるため,一般的に弱いと考えられ,弱安全性と呼ばれている.その他の評価方法として,漏洩率を個体の系列長の長さによらず,一定に保たれるという手法があり,これは強い安全性の基準(強安全性)と知られている.この第二段階では,強い安全性の基準の下で,生体識別システムの最適性能を解析する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
システムにおける安全性を弱い基準から強い基準への拡張する際、random binningの解析手法を取得し,達成可能なキャパシティー領域を導出し,その結果を2020 IEEE International Symposium on Information Theoryに投稿した.しかし,論文を査読して頂いた査読者から結果の証明の間違いが指摘されており,その修正は検討中である.正し,この問題よりも本質的な研究課題を見つけたため,そちらを優先的に取り組んだ.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は次の二つの課題に取り組む. (1) 二つの鍵が存在するシステムにおいて,秘密鍵同士に一定の相関を許す一般的なケースを想定し,その場合におけるシステムの最適性能を評価する. (2) ここまでの研究では,生体データに対してあらかじめ量子化の操作が行われていることを想定し,離散的な生体データを仮定している.一般には量子化する前の連続データを直接扱うことができると,より根本的なシステムの評価につながる.生体データの情報源および雑音通信路が連続値である下で,システムの性能がより効率的に計算できる形で特徴づけられることを示す.
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