研究課題/領域番号 |
19J13733
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上ノ町 水紀 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 二光子放出核種 / 二光子同時計測 / コンプトンカメラ / 電子飛跡計測 / 分子イメージング |
研究実績の概要 |
本研究は、二光子放出核種を対象として、2本のガンマ線の飛来方向を同時計測することにより高感度に線源位置を特定するという新手法の分子イメージング法の有用性を示すことを目的としている。本年度は電子飛跡計測技術の開発およびパラレルホールコリメータを用いた簡単な二光子同時計測技術の原理検証を行った。電子飛跡計測技術に関しては、マイクロメートルのピクセル型SOIセンサーの動作確認を行い、ベータ線を用いて電子の飛跡が計測できていることを確認した。また、パラレルホールコリメータを組み合わせたGAGGシンチレータ検出器を4台用いて111Inと177Luの同時撮像を行い、二光子計測技術により核種の分離、SN比の向上が可能であることを実証した。単一ガンマ線を用いた従来のSPECTイメージングでは、111Inと177Luの分離が難しく、正確なイメージング結果を得ることができなかったが、連続して放出される2本のガンマ線を同時計測したデータを用いることで、核種が分離されSN比が向上したイメージング結果が得られた。これにより二光子計測を行うことで、従来よりも高感度なイメージングおよび多核種イメージングへの有用性が示された。今後はリング型コンプトンカメラを用いた二光子同時計測の検証、SOIセンターの基礎性能の評価およびシンチレータ検出器と組み合わせた電子飛跡計測型コンプトンカメラのシステム開発を行っていく予定である。リング型コンプトンカメラはGAGGシンチレータとSiPMを組み合わせた検出器を用いて開発済みである。また、電子飛跡計測型コンプトンカメラに関してはSOIセンサーとシンチレータ検出器の同期システムを開発中である。電子飛跡計測型コンプトンイメージングの実現により、広範囲のエネルギーのガンマ線の撮像およびより高感度なイメージングが可能になると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はガンマ線の飛来方向を特定する検出器および二光子同時計測技術による高感度な新しい分子イメージングの有用性を示すことを目的としている。ガンマ線の飛来方向を特定するために電子飛跡を計測可能な検出器を開発しており、SOI技術を用いたピクセル検出器の評価を行い、電子の飛跡が計測可能なことを確認した。また、同時に二光子同時計測技術の原理検証も行った。パラレルホールコリメータを用いて111Inと177Luの同時撮像試験を行うことにより、二光子同時計測技術によりSN比の向上が可能になるだけでなく、核種の分離にも有用であることを示した。一方検出器に用いるセンサーとして、シンチレータの他にCdTeといった半導体検出器も候補として考えている。共同研究で放射線検出器用CdTe検出器の開発を行っており、これまでに従来法とは異なる結晶育成によるCdTe結晶の評価を行い、57Coや241Amに対して良いエネルギー分解能が得られている。検出器の開発だけでなく二光子同時計測技術の有用性の実証、センサーの開発も進んでおり順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
パラレルホールコリメータとシンチレータ検出器を用いて二光子同時計測技術のSN比の向上および核種分離を実証した。今後はより広範囲のガンマ線エネルギーのイメージングが可能なコンプトンイメージングにおいて二光子同時計測技術の有用性を示す予定である。111Inや177Luといった臨床に使用されている二光子放出核種は比較的低エネルギーのガンマ線を放出するため、低エネルギーのガンマ線イメージングも可能なリング型コンプトンカメラをこれまでに開発した。このリング型コンプトンカメラを用いて111In等の核種を対象に検証を進めていくだけでなく、市販されていない新しい二光子放出核種に対しても検証を進めていく予定である。また、電子飛跡計測型コンプトンカメラに関してもSOIセンサーとシンチレータ検出器を組み合わせたコンプトンカメラを開発していく予定である。具体的にはFPGAを用いた同期システムの構築および解析プログラムの開発を行っていく。
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