令和2年度も引き続きウイルス進化と生物進化を中心とした研究を行った。まず、哺乳類や鳥類などの脊椎動物に感染するRNAウイルスであるピコルナウイルスについて進化の時間スケールを反映した系統樹(timetree)をもとに、多様化率の解析を行った。最新のVirus-Host DBに含まれるピコルナウイルス科(Picornaviridae)について、1A(VP4)、1B(VP2)、1C(VP3)、1D(VP1)、2C(ヘリカーゼ)、3C(プロテアーゼ)、及び3D(RNA依存性RNAポリメラーゼ)の各タンパク質の遺伝子配列を取得した。これらの各領域について、MAFFTを用いてアライメントを構築し、HMMERを用いてプロファイル隠れマルコフモデル(プロファイルHMM)を作成した。さらに、Virus-Host DBに対してプロファイル検索を行い、ウイルスホモログを同定した。こうして得られた各領域の遺伝子配列について、MAFFTを用いてアライメントを作成し、RaxMLを用いて最尤法に基づく分子系統樹を構築した。その結果、1C、2C、3C、及び3Dが、多様化率の解析に適していることが分かり、これらの結合系統樹に対して、RelTimeを用いて各ノードの相対分岐年代を推定し、多様化率を求めて比較を行った。さらに、共同研究により脊椎動物の獲得免疫において遺伝子再構成に関わるRag1/Rag2遺伝子のエンハンサー領域の配列解析を行った。その結果、陸生動物(哺乳類、鳥類、は虫類)では配列が保存されているが、水生動物(魚類、両生類)では保存されていないことが分かった。このことは、水から陸への生活環境の変化と Rag1/Rag2 の発現調節に何らかの関連性がある可能性を示しており、生物の多様な進化と獲得免疫の進化につながりがあることが示唆された。この成果は論文として発表した。
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