本年度の研究では、最小拡張U(1)_(μ-τ)模型におけるニュートリノに関する物理量への制限を解析した前年度の研究に基づき、その枠組みにおいて宇宙の物質・反物質非対称性を実現できるかを議論した。具体的には、インフラトンの崩壊によって重い右巻きニュートリノが生成され、その右巻きニュートリノの崩壊によって物質・反物質非対称性が生成される非熱的レプトジェネシスと呼ばれるシナリオを考えた。CP位相といったニュートリノのパラメーターが実験によって測定されているニュートリノ混合角や質量の二乗差によって決まってしまう本模型において、非熱的レプトジェネシスによる物質・反物質非対称性の生成が、Planck衛星のCMB観測によるインフレーション模型や軽いニュートリノの質量への制限に抵触することなく実現しうることを明らかにした。 また、U(1)_(μ-τ)電荷を持つ暗黒物質を含む模型を議論した。Thermal freeze-out機構のもと、この模型が実験や観測の制限を回避し、ミューオンの異常磁気能率を説明しつつ、暗黒物質の残存量が説明できるかを議論した。その結果、暗黒物質のU(1)_(μ-τ)電荷が大きければ、両方を自然に説明することができることを明らかにした。さらに、銀河中心に存在する暗黒物質の対消滅によって生じたニュートリノによる暗黒物質の間接検出についても議論した。この模型では暗黒物質は主にsecludedタイプの対消滅をする。この論文では、Secluded対消滅する暗黒物質のニュートリノによる間接検出を初めて議論し、ニュートリノ検出装置による対消滅断面積への制限を求めた。 以上のように、前年度はレプトンフレーバーに依存するU(1)ゲージ群の持つ性質による模型の特徴、制限について議論し、本年度はその結果を利用してU(1)_(μ-τ)模型における現象論や実験による検証を議論した。
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