二酸化炭素を資化できる藍藻は、バイオアルコールをはじめとする有用化合物生産における理想的な宿主であるが、産業応用に向けては生産量の向上が必要である。目的化合物の生産量が低下する原因として、代謝系が分岐することによる競合が挙げられる。そこで本研究では、藍藻における代謝分岐を3波長の光を用いて制御することで、バイオアルコール生産量の向上を試みた。 モデル藍藻であるSynechocystis sp. PCC 6803を宿主とし、緑色光/赤色光で遺伝子発現のON/OFFが制御可能な光センシングシステムを応用することで、バイオアルコールの生産を光で制御することに成功した。非誘導条件ではバイオアルコールはほとんど生産されなかったのに対し、誘導条件では生産量が増大し、5日間の培養で最大313 mg/Lのバイオアルコール生産を達成した。次に、バイオアルコール生産における代謝分岐点となるピルビン酸代謝経路を同光センシングシステムによって制御した結果、菌体の生育を抑制しつつ、バイオアルコール生産量を向上させることに成功した。さらに、バイオアルコール生産に関わる代謝関連酵素の改変により、大腸菌において青色光に応答して活性化される変異体の構築を行った。具体的には、スプリット化した代謝関連酵素と、青色光に応答して会合する光センサタンパク質を遺伝子工学的に融合した。大腸菌に導入し発現させた結果、青色光に応答したバイオアルコールの生産を確認した。 以上より、3波長の光を利用した代謝制御に向けた研究基盤が整備されたと考えられた。今後これらの技術の組み合わせにより、バイオアルコール生産量のさらなる向上が達成できると期待される。
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