研究課題
以下の3つの研究に取り組んだ。1. 胎児期での有機リン系殺虫剤(OP)への曝露量を評価するため、エコチル調査(子どもの健康と環境に関する全国調査)の愛知ユニットセンターにおける参加者のうち、同意を得られた一部の参加者については妊娠前期および中・後期の尿を長期保存してある。これらの尿が保存されている方のうち、さらに1歳半と3歳時点で児の尿回収に協力していただいた母親600名分の妊娠期の尿を用いた。300名分に関しては前年度のうちにOP尿中共通代謝物(DAP)の分析が完了していたため、今年度は残りの300名分(妊娠前期および中・後期の各2時点 600検体分)の測定を行った。分析機器には超高圧高速液体クロマトグラフ質量分析計を用いた。各物質の定量を行い、検出率や中央値を算出した。2. エコチル調査の愛知ユニットセンターにおける参加時のうち、6歳児および8歳児を対象に、児童用Autism-Spectrum Quotient日本語版を用いて発達調査を行った。6歳時については、エコチル調査の詳細調査参加児のみを対象とし、調査参加時(2019年4月21日から2020年2月24日まで)に対象の164名全員から質問紙、そのうち150名から早朝尿を回収した。8歳時については、質問紙を郵送で発送し回答後郵送にて返却していただき、2019年11月から2020年2月までに445名から回収した。2020年度も引き続き調査を継続する。3. 高速液体クロマトグラフ-高分解能質量分析計を用いて、OP代謝物の網羅的分析法を確立した。分析法を確立するにあたって、7種類のOP曝露マーカーの分析妥当性について確認した。この方法を用いて、前年度にDAPの分析を行った妊婦のうち、妊娠前期のDAP濃度が上位3分の1であった200名のうち100名の網羅的分析を完了させた。
2: おおむね順調に進展している
2019年度の目標であった妊婦600検体分(300名各2時点)のOP尿中共通代謝物を完了させた。さらに、網羅的分析に関しては、方法を確立し、当該年度の目標であった100名分の分析を完了させた。児を対象とした質問紙調査についても、予定通り参加者から質問紙を回収することができた。
測定を完了した、胎児期と出生後(1.5歳、3歳時)のOP曝露量のデータを用いて、曝露量の縦断的評価を行う。網羅的分析に関しては、分析の完了していない残り100名の尿を分析し、対象とした妊婦がどのようなOP薬剤に曝露していたかの特定を目指す。
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Environment International
巻: 134 ページ: 105294~105294
https://doi.org/10.1016/j.envint.2019.105294