研究課題/領域番号 |
19J13936
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
末廣 翔 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
キーワード | 高温高圧実験 / ダイヤモンドアンビルセル / 鉄 / 融解鉄 / 地球コア / 電気伝導度 |
研究実績の概要 |
誕生初期の地球は現在よりも非常に高温で金属コアはすべて溶融していたと考えられており、コアの対流が数十億年にわたる地磁気の生成、維持の源となっている。古地磁気観測から地磁気の強度には特定の年代において大きな変動が見られ、その原因として内核の誕生によるコアの対流の活発化が提唱されているが、内核年齢の強い制約には至っていない。高圧実験によりコアを構成する鉄合金の電気・熱伝導特性を測定し、モデル計算を行うことで内核の誕生時期を見積もる方法があるが、コア中鉄合金が融解前後の振る舞いは実験の困難さから十分に測定されてこなかった。 本研究では地球コアに存在している液体外核の電気・熱伝導率を解明することを目的として、次の(A)~(C)の項目を達成することを目標としている(A)DACを用いた高圧力条件下での融解鉄の電気伝導度測定手法の確立、(B)地球外核に相当する圧力(135~330 GPa)において融解鉄の電気伝導度測定を行う、(C)地球コアを構成しているような軽元素を含んだ融解鉄合金の電気伝導度測定を行う。 今年度、主に(A)の項目に着手した。DAC内部において液体の物性を測定する場合、試料形状の変化が大きな問題となる。この問題を解決するために試料の周囲を鉄よりも融点の高い単結晶サファイアで囲み、融解による試料形状の変化を最小限とすることで融解鉄の電気伝導度測定を実現した。この方法により最大圧力70 GPaにおける融解が鉄の電気伝導度に与える影響を明らかにした。この結果はこれまで行われてきた高圧力下における融解鉄の電気伝導度測定の圧力範囲を大幅に更新したものである。この手法開発は今後のDACを使用した液体物質の物性測定の基盤となり得る開発となるだろう。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時の計画では(A)DACを用いた高圧力条件下での融解鉄の電気伝導度測定手法の確立、(B)地球外核に相当する圧力(135~330 GPa)において融解鉄の電気伝導度測定を行う、(C)地球コアを構成しているような軽元素を含んだ融解鉄合金の電気伝導度測定を行う、のうち今年度(A)、(B)の実験を行う予定であった。しかしながら、今年度の実験は地球外核に相当する圧力範囲での測定は成功していない。その原因としては100 GPaを超えるような超高圧条件下では試料室の厚みが非常に薄いことが考えられる。(A)により開発行った手法では単結晶サファイアにより試料形状の変化を抑制しているが、試料室が極めて薄くなることで単結晶サファイアが砕けてしまい試料形状が大きく変化してしまい物性測定には至っていない。今年度は上記の問題を解決することができていないため進捗状況としてはやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の成果を踏まえ来年度(令和2年度)の研究方針は主に以下のものとなる。 (1)地球コア圧力での融解鉄の電気伝導度測定を行う、(2)今年度の研究によって開発された実験技術を国内外の学会にて発表する、(3)本研究の成果を学術論文に投稿する、(4)軽元素を含む融解鉄合金の高温高圧電気伝導度測定を行う。 (1)に関しては今後、実験を重ね試料の周囲にあるサファイアの加工することで実現していく予定である。また(2)(3)に関しては現在、準備中である。(4)については(1)の進捗状況にもよるが地球コアの電気・熱伝導率といった輸送特性を解明する上で必要となるものとなっている。
|