研究課題/領域番号 |
19J13958
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
坂口 聡範 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
キーワード | ドローン / ピニング制御 |
研究実績の概要 |
通常のドローンは3自由度並進運動と3自由度回転運動の計6自由度の運動に対して4自由度しか持たないため,位置と姿勢を独立に制御できない.そこで,運動能力を向上させるために,様々なチルト型ドローンが提案されている.モータ配置を変更することで,チルト能力と変形機能を向上させた新しいチルト型ドローンを開発した.このドローンは1個のアクチュエータのみでフレームをピッチ方向にチルトするチルト機能とチルト運動に伴ってフレーム形状を縦に折り畳む変形機能を持つ5自由度のドローンである.このようなチルト機能と変形機能は狭い空間での作業を実現するため,災害現場やインフラ点検など様々な分野での活用が期待できる.一方で,90度チルトした状態では従来のPID制御による安定化が難しいことが明らかになり,この問題を解決するための新しい制御機構を提案した.その制御機構の導入により,90度付近でも安定に飛行できることをシミュレーション及び実機実験で実証した.この新しい制御機構を用いることで,どのような変形状態でも安定した飛行を実現でき,ドローンの飛行性能を飛躍的に向上させた.また,第15回全日本学生室内飛行ロボットコンテスト ユニーク部門 アイ・ロボティクス賞を受賞するなど対外的に高い評価を得た.さらに,この制御機構の開発の途中で,PID制御器のゲインを変化させることでホップ分岐によって安定な周期的振動現象が発生することを発見した.このような非線形現象がチルト型ドローンの実機実験によって実証されたことは当初予定していなかった興味深い研究成果である.このように,ドローン技術の発展に大きく貢献する研究成果を得ることができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の目標は次の2つであった.目標①では十分な研究成果を得られることができたが,目標②は取り組むことができなかった. ①小型のチルト型ドローンを開発し,1台の機体が安定して飛行できる制御器を設計する. ②単純なミッションに対して複数台(2~3台)のチルト型ドローンが最適フォーメーションを形成するピニング制御器を設計する. 目標①に対して得られた研究成果を説明する.従来の平行リンクを用いたチルト型ドローンの機構を改良して,可能なチルト角の範囲を飛躍的に向上させた.一方でチルト角が90度前後で従来のPID制御では安定化が難しいことが明らかになり,この問題を解決するための新しい制御機構を提案した.その制御機構の導入により,90度付近でも安定に飛行できることをシミュレーション及び実機実験で実証した.この新しい制御機構を用いることで,ドローンの飛行性能は飛躍的に向上し第15回全日本学生室内飛行ロボットコンテスト ユニーク部門 アイ・ロボティクス賞を受賞するなど対外的に高い評価を得た. この制御機構の開発の途中で,PID制御器のゲインを変化させることでHopf分岐によって安定な周期的振動現象が発生することを発見した.このような非線形現象がチルト型ドローンの実機実験によって実証されたことは当初予定していなかった研究成果である. 以上のように目標①に関して,当初予定していた以上の研究成果を得ることができ,そのために目標②まで取り組めなかったが,ドローン技術の発展に大きく貢献する研究成果である.
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況を踏まえて,本年度は次の2つを目標とする. ①複数台のチルト型ドローンを製作する. ②単純なミッションに対して複数台(2~3台)のチルト型ドローンが最適フォーメーションを形成するピニング制御器を設計する. 目標①に対して,昨年度の試作と実験によって完成度の高い機体を開発できたため,それを複数台(2~3台)製作する.目標②に対して,昨年度,1人の観測者が1台のチルト型ドローンを遠隔操作できる基礎システムを構築した.これを拡張して,目標①で製作した複数台のチルト型ドローンを用いて観測対象をモニタリングできる監視システムを構築する.ここに,目標②で設計したピニング制御器を追加して実機実験を行う.
|