近年,国内外問わず,実海域に海洋エネルギー発電装置を設置するプロジェクトが活発化しているが,海洋エネルギー発電技術は多くが研究開発に留まっており,実用化には多くの課題が残されている.特に,近年は発電量増大を目的として,海洋エネルギー発電装置の設置海域が,沿岸からエネルギー賦存量の多い沖合に変化してきている.沿岸に入射してくる波は波峰が揃い,沿海から海岸へ伝播する一方向規則規則波浪場となることが多いが,沖合の波は波峰が揃わず,多方向不規則波浪場となることが多い.しかしながら,海洋エネルギー分野における既往の数値水槽は,(i)一方向波浪場の再現を目的としたものが多く,実海域で現れる多方向波浪場や2波群が交差する2方向波浪場の再現には適用が困難である.また,(ii)海洋波と海洋構造物の相互作用計算や,砕波を伴う強非線形な現象の取り扱いも困難であった. そこで,本研究では上記の問題を解決すべく粒子法を用いた新たな数値水槽モデルの開発に取り組んだ.今年度は,多方向不規則波浪場を再現する造波モデルの開発を行い,実海域の多方向不規則波浪場の再現シミュレーションに取り組んだ.実海域の様々な波浪場(波エネルギーの方向分布が広い多方向波浪場から,一方向から伝播してくる一様規則不規則波浪場)の再現性について,数値流体力学的および統計学的観点から本モデルの妥当性について検証した.そして,結果を取りまとめ,関連学会(海洋開発)の国際会議で発表した.また,再現性・実用問題への適用可能性についてさらなる検証と考察を加えた成果を国際SCI論文で発表した.
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