研究課題/領域番号 |
19J14006
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
奥山 浩人 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 多孔質膜 / 微小細孔 / プラズマグラフト重合法 / 溶液透過 / レセプター / 抗原抗体反応 / バイオセンサー / 分子認識 |
研究実績の概要 |
より正確、迅速、かつ簡易な医療検査の実現に向けて、新たな生体分子検出法の開発は重要かつ喫緊の課題である。本研究課題では、多孔質膜材料に着目し、サブミクロンスケールの微小細孔内に、標的分子に対するレセプターを導入した膜型バイオセンサーの開発を行う。 2019年度は、プラズマグラフト重合法と活性エステル法を組み合わせることで、親水性グラフトポリマーを介して、膜細孔内に分子認識レセプターを化学固定することに成功した。さらに導入されたレセプターの特性評価を行った結果、高い密度で膜厚方向へ均一にレセプターが導入されていることを明らかとした。さらに、膜を単純に検体と接触させるのではなく、検体溶液を膜内へ積極的に透過させることで、約35分の検査時間にも関わらず高い感度を実現することに成功した。また作製したセンサは、約1ヶ月の保存後も性能の低下が起こらず、高い安定性を有することを明らかとした。 加えて、化学工学モデリングを基にして本膜型センサーの性能予測も行った。膜細孔内での分子認識現象をモデル化し、さらに様々にパラメーターを変化させた場合に得られるシグナル値を計算した。作製したモデルは実験結果をうまく再現することができた。さらに、膜自体の構造パラメーターや溶液透過条件を改善することによって、感度をさらに改善できることが示された。現在、これらの設計指針を基にした、センサー及び検出システムの改善に着手しており、今後さらなる高性能化が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は膜細孔内へのレセプターの化学固定法の構築と、及び血清などの検体の利用に向けた膜性能評価を目的としていた。プラズマグラフト手法を用いることでレセプターの導入が実現でき、またその細孔内密度は非常に高く均一であることが分かった。また、いくつかのタンパク質を用いた吸着性評価も実施した。その結果、膜型センサー表面はプラズマグラフト重合法で導入したポリマー骨格によって非特異的吸着を高度に抑制することが可能である一方、一部のタンパク質は電荷の影響で吸着を起こすことが判明した。このように、今後実用的なセンサー開発を目指すにあたり、解決すべき課題も抽出することができている。さらに、膜性能の実験的な検討にとどまらずモデル計算からもさらなる高感度化に向けた指針を得ることに成功しており、当初の目的を概ね達成できたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
膜型センサーのさらなる高感度化に向け、ここまでで獲得してきた設計指針を活かして、多孔質膜の構造や検出法の改善を引き続き進めていく。さらに、生体由来のサンプルを用いた検査に向けて、膜表面に修飾するグラフトポリマーの構造やグラフト密度に関して改善を行っていく。また、現在複数の生体分子をターゲットとした膜型センサーを開発しているが、今後は特定の疾病に対するバイオマーカーをターゲットとして、本センシング手法の有効性を実証していく。
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