研究課題
銀河宇宙線は超新星残骸と考えられており、その粒子加速機構はフェルミ機構が有望視されている。しかしながら、この機構はエネルギーの低い非相対論的粒子には有効的に働かず、何らかの粒子注入機構による予備加速が必要であると考えられている。この機構を解き明かす鍵は、非相対論的粒子が予備加熱を受けた直後に相当する準相対論的粒子の組成や総量といった情報である。超新星残骸で加速された準相対論的な粒子の組成に迫るべく、荷電粒子が原子と衝突した際に同時に複数の電離が電離する過程(多重電離)に注目した。地上ビーム試験のデータから、衝突するイオンの電荷が大きくなればなるほど多重電離起因の輝線構造が強くなることを突き止めた。精密分光観測によりこの輝線構造が検出できれば、加速現場における世界初の重イオン測定を実現することができる。本研究の内容は国際研究会で発表した。将来の精密分光観測を実現するXRISM衛星搭載用のCCDの選定を行うため、スクリーニング試験を行なった。候補素子に対し、電荷転送効率と校正線源を用いたエネルギー分解能の測定を行うことで、フライト候補素子の選定を行った。また、CCDの応答関数作成に必要なデータの取得を行なった。近年の観測研究により、従来の SNR 進化の描像に反する再結合が優勢な過電離プラズマが、複数の SNR から発見され、その存在は特異なものではなくなりつつある。この過電離プラズマの成因を解明すべくXMM-Newtonを用いた超新星残骸 W44 の領域毎の解析を行なった。その結果、分子雲と衝突する領域にかけて、プラズマの温度が低く、過電離の度合いが大きいことを発見した。以上の結果は、W44における過電離プラズマの成因が衝突する雲子雲からの熱伝導冷却であると解釈できる。本研究は投稿論文で発表済みである。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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The Astrophysical Journal
巻: 890 ページ: 62
10.3847/1538-4357/ab6987
Journal of Instrumentation
巻: Volume 14 ページ: Issue 04
10.1088/1748-0221/14/04/C04003